誰もが恐れた「ノストラダムスの大予言」を通して、20世紀のオカルトブームを振り返る
2019年10月2日 更新

誰もが恐れた「ノストラダムスの大予言」を通して、20世紀のオカルトブームを振り返る

1999年7の月に恐怖の大王がやってくる。 ミドルエッジ世代の皆さんは、この有名なノストラダムスの予言を恐れていた方も多いのではないでしょうか。 今回は、世紀末を賑わせた終末論・オカルトブームについて振り返ります。

2,134 view

1973年、「ノストラダムスの大予言」大ヒットの影にはオイルショック?

ノストラダムスは、16世紀フランスで活動した占い師です。生前から予言が当たると評判で、国王の公認も受けていました。
日本で有名になったきっかけは、1973年に五島勉さんがノストラダムスの著作を解説した「ノストラダムスの大予言」を出版したことです。

1973年は、小説「日本沈没」が大ヒットしたり、「超能力者」ユリ・ゲラーさんのスプーン曲げが話題になるなど、オカルトや終末論がブームになっていました。
こうした時流に乗り、「大予言」はわずか3か月でミリオンセラーになったのです。
翌1974年には、この本の内容を元にしたホラー映画も製作され、なんと文部省の推薦を受けました。
この頃、オイルショックにより、日本経済は戦後初のマイナス成長を記録し、高度経済成長が終焉しました。

「狂乱物価」と言われる物価の高騰が発生し、物資の買い占め騒動に繋がりました。
省エネルギーのために照明の消灯やエスカレーターの停止が起き、テレビも放送時間を縮めた様子は、まさに終末後の世界のようでした。
こうした社会不安が、当時のオカルトブームを呼んだのかもしれません。
ユリ・ゲラー わが超能力―それでもスプーンは曲がる!

ユリ・ゲラー わが超能力―それでもスプーンは曲がる!

「ムー」の創刊と、80年代の「前世少女」「戦士症候群」

1979年には、五島勉氏による「ノストラダムスの大予言」の続編が発売。その後も数年おきに刊行され、さまざまな解釈が広まりました。
この年には雑誌「ムー」が創刊。現在も続くこの雑誌は、心霊現象を肯定的に扱い、さまざまな都市伝説を紹介したことで、オカルトファンを中心にヒットしました。ノストラダムスに関する記事もしばしば掲載されました。

1980年代には、「前世」や「転生」について扱った作品がヒットした影響で、「ムー」の読者ページは「前世の仲間捜し」として文通相手を募集する人たちであふれました。
「前世」への思い入れから危険な行動に出る人や、「自分はアトランティスの戦士であった」と主張する人も現れたことで、「前世少女」や「戦士症候群」と呼ばれていました。
特に1983年公開の劇場版「幻魔大戦」や、1986年の少女漫画「ぼくの地球を守って」の影響を受けた人が多かったようです。
こうした社会現象を通して、「予言」を恐れる人達がますます増えていったのでしょう。
ムー 1993年4月号 No.149 総力特集=199...

ムー 1993年4月号 No.149 総力特集=1999年 空から月が落ちてくる!!

「99年7の月」が近づき、テレビが連日オカルトを取り上げた90年代

このように、ノストラダムスが火種となって広まったオカルトブームは、終末予言まで10年を切った90年代に再び盛り上がります。
このころ、元号は昭和から平成に代わり、バブル景気の崩壊により日本経済は大きく落ち込み、激動の時代を迎えていました。

そんな中、1990年には週刊少年マガジンで「MMR マガジンミステリー調査班」というマンガが始まりました。
このマンガでは、ノストラダムスの予言が頻繁に登場します。
さまざまな終末論が紹介され、それに対し登場人物が「なんだってー!」と驚く場面が定番でした。
このフレーズは、現在でもインターネット上で流行していますよね。
MMR-マガジンミステリー調査班-(3) MMR-マガ...

MMR-マガジンミステリー調査班-(3) MMR-マガジンミステリー調査班- (週刊少年マガジンコミックス)

90年代後半には、阪神大震災が発生。
この頃には、テレビのオカルト番組や報道の影響もあり「終末」の到来を予感させる独特の雰囲気がありました。
実はこの時期に特別に犯罪件数が増えていたという記録はないのですが、少年犯罪や大事件がテレビで頻繁に取り上げられました。
また、「特命リサーチ200X」や「アンビリーバボー」といったオカルトを積極的に取り扱うテレビ番組が流行。
「TVタックル」では、超常現象やノストラダムスについて、肯定派と否定派の論戦が繰り広げられました。
否定派としてよく出演していた物理学者の大槻義彦教授は、この番組で有名になりましたよね。
UFO研究家を名乗る韮澤潤一郎氏のユニークな発言に対して、大槻教授が「馬鹿なことを言うんじゃない!」「証拠を見せてくださいよ!」などと否定し、それを司会のビートたけしさんが軽妙なジョークで茶化す流れが定番でした。
科学新聞部コックリさんのたたりの巻 (大槻教授の「怪奇...

科学新聞部コックリさんのたたりの巻 (大槻教授の「怪奇現象」シリーズ)

何事もなく過ぎ去った終末の日

そして、ついに迎えた1999年7月1日。
「7の月」予言を信奉し恐れていた人達は、実際に避難をした人もいたそうです。
そうした熱狂は、真面目な報道番組である「ニュースステーション」でも特集されました。
筆者も、99年7月は何かが起こるのではないかと恐れながら過ごした記憶があります。
しかし、この1ヵ月は、隕石が落ちる事もなく、核戦争が起きることもなく、無事に過ぎ去りました。
コンピュータの「2000年問題」を予言と結びつける説もありましたが、2000年問題の影響も限られたものにすぎず、人類は無事ミレニアムを迎えることができました。
終末予言が外れて、良かったですね。

終末予言が流行した時期には、その裏にオイルショックやバブル崩壊といった社会不安がありました。
また、米ソの軍拡競争から、核戦争に対する現実的な恐怖があったこと、経済成長に伴う公害問題なども、終末予言に現実味を与えていたといいます。
終末予言は、社会情勢や時代を映す鏡だったのかもしれません。
13 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

ノストラダムスの大予言で誰もが怖れていた1999年7の月に何があった?

ノストラダムスの大予言で誰もが怖れていた1999年7の月に何があった?

子供の頃は1999年なんて遠い未来のように感じていて、ノストラダムスに予言された1999年7月に起こる世界の滅亡もまだまだ先の出来事だと思っていましたよね。それなのにあっという間に到来し過ぎ去ってしまいました…。世界は滅亡しなくて良かったですが、そんなハラハラドキドキのミレニアム直前1999年7の月には何があったのでしょうか?
そうすけ | 372 view
伝説の封印映画『ノストラダムスの大予言』のコミカライズ版は、ちゃんと人喰い描写が登場する問題作だった!

伝説の封印映画『ノストラダムスの大予言』のコミカライズ版は、ちゃんと人喰い描写が登場する問題作だった!

1973年11月に出版されて大ベストセラーとなった、五島勉の著書『ノストラダムスの大予言』を原作にパニック映画として公開された『ノストラダムスの大予言』劇場公開時には問題になったシーンがコミカライズ版で蘇った!
滝口アキラ | 9,680 view
「1999年7月」といえばノストラダムスの大予言、その予言内容とノストラダムスの数奇な運命。

「1999年7月」といえばノストラダムスの大予言、その予言内容とノストラダムスの数奇な運命。

「1999年7月」といえばノストラダムスの大予言。1999年が近づくにつれて世界終末説を唱える人が現れました。これほどまでにブームを巻き起こした大予言、そして預言者ノストラダムスとはどんな人物だったのか。
青春の握り拳 | 14,545 view
【1973年レコード大賞】え?ジュリーじゃないの?大賞受賞曲はまさかの・・・

【1973年レコード大賞】え?ジュリーじゃないの?大賞受賞曲はまさかの・・・

かつては国民的人気を誇り、年の瀬には大賞予想で盛り上がった「日本レコード大賞」。毎年、結果は大方の予想通りとなるケースが多かったものの、たまに意外な曲が受賞するサプライズの年もありました。その好例が1973年。戦前の最有力は沢田研二(ジュリー)でしたが、まさかの曲が大賞を受賞します。その曲とは!?
izaiza347 | 201 view
【1999年】八反安未果覚えてる!? 日本レコード大賞新人賞の受賞曲は!?受賞者は今!?

【1999年】八反安未果覚えてる!? 日本レコード大賞新人賞の受賞曲は!?受賞者は今!?

昔は大晦日の夜といえば、テレビの前で一家団欒。『日本レコード大賞』と『紅白歌合戦』をはしごして視聴した方が多かったことでしょう。中でもドキドキするのが、日本レコード大賞の「大賞」と「最優秀新人賞」の発表の瞬間。今回は、日本レコード大賞の「新人賞」にフォーカスし、受賞曲と受賞者の今についてご紹介します。
izaiza347 | 397 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト