ゲーム業界衝撃のオチ!隠れた名作RPG『moon』は、RPG好きに送るアンチRPGだった
2018年3月5日 更新

ゲーム業界衝撃のオチ!隠れた名作RPG『moon』は、RPG好きに送るアンチRPGだった

ポップ&アイロニー。王道RPGを痛烈に皮肉りながら、強烈なラブを放つ異色のゲームとして有名な、ラブデリック製作のプレイステーション用ゲーム「moon」の紹介です。だいたいいつも高値のプレミアが付いていることでも知られている隠れた名作です。いや、もう有名すぎて隠れていませんね。

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概要

『moon』(ムーン)は1997年にラブデリックが開発しアスキーから発売されたリミックスRPGアドベンチャーゲームというジャンルのプレイステーション用ゲームソフト。粘土細工のようなキャラクター、童話のようなストーリー、ゲーム内に存在する「MD(MoonDisk)」を入手することで楽しめる様々なジャンルのBGM、そして冒険的なテーマを持つ、一風変わったゲームである。
『moon』パッケージ

『moon』パッケージ

「おやめ下さい!」「あるじゃねえかよコインと剣がよ!」「おやめ下さい勇者様!」
アンチRPG・アンチゲーム
従来のRPGでは、「勇者」は英雄だった。

しかし、MOONの世界に登場する「勇者」は罪の無いモンスター(ゲーム内では「アニマル」と呼ばれる)を殺し、他人の家に押し入り色々な物を強奪していくような、非常に迷惑な存在として登場する。

放送されていたCMのキャッチコピーは「もう、勇者しない。」。内容は“岡本信人演じる勇者が、「おやめください勇者様!」と追いすがる主婦を押しのけ強引にタンスを開け、「有るじゃねーかよ! コインと剣がよ!」と叫び奪って行く”という、RPGの通例的部分を風刺したものだった。

主人公である「少年」の役目は、勇者に殺されたアニマル達を救い出し、奇妙で暖かい住人達と心を通わせることだ。そうすることで「ラブ」と呼ばれるものが集まりレベルアップできる。

また、ストーリーの中に大きなテーマが隠されており、それに気付かなければ真のエンディングを見ることは出来ない。それはゲームそのものの存在を否定しかねない皮肉なものである。真のエンディングの最後に表示される文章はそれを露骨なまでに表現している。

キーワードは「扉を開けて」。

キャッチフレーズは「もう、勇者しない。」

1997年に数多の「ゲームっぽくないゲーム」を世に放ったラブデリックが開発アスキーが発売した、プレイステーション用ゲームソフトです。当時王道だった西洋風ロールプレイングゲームの形を成してはいますが、「モンスターと一切戦闘しない」「モンスターのタマシイを助けてラブを獲得し、それによりレベルアップする」という風変わりなシステムが話題となりました。
他に例を見ない独特な世界観のRPGです。宣伝CMでは一世を風靡したRPG『ドラゴンクエスト』でのゲーム内行動をリアルに再現した上で暗に否定するという挑戦的な行動に出ました。

アンチ勇者、殺生なしの「オールラブアンドピース」という今までのRPGの概念を覆した意欲作です。グラフィックは粘土ジオラマを模したCGで構成されており、この世界観と合わせた独特な温かみが感じられる描画が大きな特徴となっています。
音楽はMD(ムーン・ディスク)をゲーム内のショップで購入し、プレイヤーが好みに選曲できるという手法が取られています。
RPGという名前ではありますが、ゲームジャンル的にはアドベンチャーに近いです。

当時のCM

『moon』CM

戦闘がまったくないのが特徴のRPGでした。(後述)

雰囲気的にはアダルトな感じのゲームといった印象。
オリジナリティにとんだグラフィック、BGM、ハイセンスなゲームだったと思います。

あらすじ

竜に食べられた、失われた月を取り返す。そのために勇者は、数々の冒険をくぐり抜け、最大レベルに上がった。そして月にある竜の城、そのラスボス、ドラゴンに挑んだ―――が。
「ゲームなんかやめて早く寝なさい」
RPGが大好きな少年(プレイヤー)は、母に叱られてゲームを消した。しかし、消したはずの画面がなぜか起動し、プレイヤーは吸い込まれてしまう。プレイヤーが落下した場所には、先ほどまで遊んでいたゲームの世界が広がっていた。
ゲーム上と印象がまったく異なる勇者や、強烈な個性を持った町人たち。彼らにプレイヤーの姿は見えなかったが、唯一、目の見えないおばあちゃんだけが主人公を見つけてくれた。おばあちゃんの孫の服を借り、やっと人に見える姿となったプレイヤーは、「ラブ」を集める旅に出る。勇者とは違った方法でも、失われた月の光を取り戻すため、光の扉を開くために。

独創的なシステム

主人公はゲームの外の世界(現実世界)から迷い込んだ少年

迷い込むまでに少年が現実世界でプレイしているRPGが「Fake MOON」。実際にプレイヤーが操作します。ファミコンRPGを意識した劇中劇ですが、これはこれで作りが深いです。
ゲーム内のmoon世界では現実世界での姿は住人に認知できないのか、少年は透明人間になってしまいます。服を着る事になりようやく他人にも認識されますが、別に透明人間だからといって少年が特別ヘンな生命体というほどでもないです。それ以上にアクが強い住人が多すぎるため…。
少年は後述するラブの力がなければ長時間行動すらままならない状態です。簡単に言えば睡眠欲みたいなものですが。

「敵を倒して経験値を貯め、レベルアップしてラスボスへ」というRPGのお約束を根底から覆す

経験値は「ラブ」として表記され、これは勇者によって殺されたアニマルのソウル(魂)を元の肉体に戻してあげる(生き返らせる)事で蓄積します。ついでにお金ももらえます。
他にも困っている住人の願い事や頼み事を聞き届けたり、お使いしたりミニゲームをクリアしたりする事でもラブは蓄積されていきます。
ラブが一定数蓄積されるとレベルアップしますが、それによる恩恵は「少年の行動時間が増える」のみ。とはいえかなり重要ですが。

住人はすべて「生きて」いる

moon世界は城、城下町、森、砂漠、孤島、未来都市などいろいろな地形や地域があるがそこに住む住人たちはタイムスケジュールに則って動いています。
朝になれば店を開け、昼になれば散歩に出かけ、夜になれば酒場で呑み、深夜になれば怪しい研究に精を出す…。一週間の範囲で行動が決まっていますが、少年の行動で変化することも。
この時間概念はソウルキャッチ(アニマルソウル救出)にも大いに影響し、○曜日の○時頃に○○で○○するとソウルキャッチ可能など細かく決まっています。

BGMは自分で選曲する

ゲーム内のMDショップで販売されているディスクを購入するとメニュー画面のサウンドプレイヤーに曲が追加されていきます。
数曲を設定しておいてのプログラム再生や単曲のみを設定してのリピート再生など普通の音楽プレイヤーとインターフェースが似ており、使いやすいです。もちろん無音にして少年の足音や鳥の声など、環境音だけをBGMにもできます。
MDは全40曲近く存在し、さまざまなアーティストが多岐に渡るジャンルのBGMを提供しています。それぞれ人気が高いです。
サウンドトラックは存在しましたが2012年に廃盤となりました。復刻を望む声も多く、オークション等では高値で取引されています。

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