しかし、登場する各モビル・スーツで設定された武装や内蔵兵器は、ほぼ全て演出で活かされた『逆襲のシャア』において、α・アジールの隠し腕だけが存在にも触れられていないことは、劇中のメカ描写の細やかさからすると逆に意外であった。
当時のガンプラの流れを、『逆襲のシャア』シリーズの流れで俯瞰してみよう。
ちなみに『逆襲のシャア』以前の「アニメ化された『ガンダム』シリーズのガンプラ」としては、『ガンダムZZ』の1/144 ザクⅢが1986年の11月で最後であり、正規ガンプラとしては、その間に模型雑誌主導企画『ガンダムセンチネル』の1/144 フルアーマーダブルゼータガンダム(1987年7月)から1/144 Ex-Sガンダム(1988年11月)までのシリーズが間を埋めている。
ちなみに『逆襲のシャア』以前の「アニメ化された『ガンダム』シリーズのガンプラ」としては、『ガンダムZZ』の1/144 ザクⅢが1986年の11月で最後であり、正規ガンプラとしては、その間に模型雑誌主導企画『ガンダムセンチネル』の1/144 フルアーマーダブルゼータガンダム(1987年7月)から1/144 Ex-Sガンダム(1988年11月)までのシリーズが間を埋めている。
1/144 νガンダム(1987年12月)800円
1/144 リ・ガズィ(1987年12月)800円
1/144 ヤクト・ドーガ(ギュネイ・ガス専用機)(1988年1月)800円
1/144 サザビー(1988年2月)1000円
1/144 ジェガン(1988年3月)500円
1/144 ギラ・ドーガ(1988年3月)700円
1/144 ヤクト・ドーガ(クエス・パラヤ専用機)(1988年4月)800円
1/144 νガンダム(フィン・ファンネル装備型)(1988年7月)1000円
1/550 α・アジール(1988年8月)1000円
1/100 νガンダム(1988年10月)2500円
1/144 リ・ガズィ(1987年12月)800円
1/144 ヤクト・ドーガ(ギュネイ・ガス専用機)(1988年1月)800円
1/144 サザビー(1988年2月)1000円
1/144 ジェガン(1988年3月)500円
1/144 ギラ・ドーガ(1988年3月)700円
1/144 ヤクト・ドーガ(クエス・パラヤ専用機)(1988年4月)800円
1/144 νガンダム(フィン・ファンネル装備型)(1988年7月)1000円
1/550 α・アジール(1988年8月)1000円
1/100 νガンダム(1988年10月)2500円
ガンプラの歴史は、その後OVA作品の、アニメでは初の富野由悠季氏以外の監督作品になった『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(1989年)のモビル・スーツのガンプラ化へ移行していく。
『ポケットの中の戦争』に登場するザクやゲルググは、当初はデザイナーの出渕裕氏(『逆襲のシャア』からの継続登板であった)的には、最初の『機動戦士ガンダム』に登場したザクやゲルググと同じ機体であり、いわゆる2018年の現代ガンプラビジネスでいうところの「リファイン」「当時より解像度を上げた」ものとして新たなスタンダードを目指してデザインされたが、まだその頃にはバンダイサイドにリファインビジネスの成功例がなかったために、全ての機体が別モビル・スーツとされてしまい、「ズゴックE」「ザクFZ」「ゲルググJ」等といったMSV的な売り方をされてしまった。
『ポケットの中の戦争』に登場するザクやゲルググは、当初はデザイナーの出渕裕氏(『逆襲のシャア』からの継続登板であった)的には、最初の『機動戦士ガンダム』に登場したザクやゲルググと同じ機体であり、いわゆる2018年の現代ガンプラビジネスでいうところの「リファイン」「当時より解像度を上げた」ものとして新たなスタンダードを目指してデザインされたが、まだその頃にはバンダイサイドにリファインビジネスの成功例がなかったために、全ての機体が別モビル・スーツとされてしまい、「ズゴックE」「ザクFZ」「ゲルググJ」等といったMSV的な売り方をされてしまった。
『ポケットの中の戦争』ガンプラはズゴックE(1989年3月)からスタートし、「出渕裕版RX-78 ガンダムリファイン」の二度目となるアレックスは、シリーズ後期のNo.9で、ガンダムNT-1(1989年8月)として発売された。
全体的に『逆襲のシャア』と『ポケットの中の戦争』のガンプラを比較してみると、僅か一年の差とは思えないほどに、パーツの色分けやスナップフィットの設計技術が向上しており、むしろこのα・アジール等は、古き良き時代のガンプラの要素に満ちた最後のガンプラだったのかもしれない(後に狙い過ぎのFG等が出たが)。
全体的に『逆襲のシャア』と『ポケットの中の戦争』のガンプラを比較してみると、僅か一年の差とは思えないほどに、パーツの色分けやスナップフィットの設計技術が向上しており、むしろこのα・アジール等は、古き良き時代のガンプラの要素に満ちた最後のガンプラだったのかもしれない(後に狙い過ぎのFG等が出たが)。
部品をニッパで切り取り、接着して色を塗る。細かい突起や銃身などは別パーツで、失くさないように慎重にランナーから切り出して、しっかり接着剤で本体に固定する。
そういった「プラモデルの当たり前」を、塗り替えようとしていた80年代後期のガンプラにおいて、このα・アジールは、逆に古い模型の在り方を選ぶことで、リファインの必要のない完璧さを手に入れたのかもしれない。
そういった「プラモデルの当たり前」を、塗り替えようとしていた80年代後期のガンプラにおいて、このα・アジールは、逆に古い模型の在り方を選ぶことで、リファインの必要のない完璧さを手に入れたのかもしれない。
ラインナップの半分以上のキットの肘関節設計がおかしい、プラモデルなのになぜビスをドライバーで回し止めて作らねばならないのか、等々、黎明期ゆえの迷走が随所に見られた『逆襲のシャア』シリーズであっただけに、トリを務めるのが「古い時代の“模型作り”」の原点に戻ったこのα・アジールと、ポリキャップ以外にも合金パーツ等を積極的に取り入れ、今や隠れファンからは「初代マスターグレード」とまで呼ばれるほどの出来を誇った1/100 νガンダムであったことは、それぞれそれなりに意味のあったことだったのかもしれない。
その後、νガンダムは、1/144でも1/100でも、HGUC、MGでそれぞれ、さらに完成度の高い、さらに出来の良い決定版をが繰り返されているが、2018年現在、一部のコレクションフィギュア関連を除いて、α・アジールがプラモデルとしてリファイン、リメイクされたことはない。
大河さんの世代でいえば、この作品と、『ポケットの中の戦争』を挟んで、『機動戦士ガンダムF91』(1991年)辺りから、ガンプラは「模型の1タイトル」ではなく、「ホビーの1ジャンル」になっていったなという想いが強い。
なのでこの連載も、ほどなくHGUCキットを取り上げていくことになるのだが、その前に、2つほど「あの時代を象徴したガンプラ」を紹介しておかねばなるまい。
というわけで、『ガンプラり歩き旅』は、まだまだ続きます!
なのでこの連載も、ほどなくHGUCキットを取り上げていくことになるのだが、その前に、2つほど「あの時代を象徴したガンプラ」を紹介しておかねばなるまい。
というわけで、『ガンプラり歩き旅』は、まだまだ続きます!
市川大河公式サイト
光の国から愛をこめて
フリーランスライター・脚本家・演出家・元映画助監督・制作進行
市川大河が語る、ウルトラマン、ガンダム、日本のカルチャー