長い下積みから大輪の華を咲かせた、屈強のサラブレッド「イナリワン」
2016年11月25日 更新

長い下積みから大輪の華を咲かせた、屈強のサラブレッド「イナリワン」

大井競馬場でデビュー後、4歳まで地方で競走馬生活を送り、5歳になってやっと中央入り、その後GⅠ制覇を果たし、オグリキャップ・スーパークリークとともに「平成3強」と呼ばれるまでになった「イナリワン」を振り返る。

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中央転籍

1989年1月、数え6歳になったイナリワンは三浦トレセン・鈴木清厩舎へ移籍になります。
「盾」取り、春の天皇賞に向けたローテーションがスタートしました。
しかし、急な環境の変化に精神が昂り、食が細って体重が落ちてしまったのです。
鞍上には小島太、本年初戦の、2月11日スバルS(京都)は4着。
第2戦、阪神大賞典3月12日は5着、厳しい結果となりました。
南関東最強馬と称されて中央入りしたイナリワンですが、結果を残せず、大一番を迎えることになります。

天皇賞と武豊との出会い

タマモクロスは引退、スーパークリーク・オグリキャップも脚部不安のため回避という、絶対的主軸不在で迎えたにもかかわらず、イナリワンは4番人気。前2レースの凡走により人気は落ちていました。しかし、食が徐々に戻り、体調は良化してきました。
そして、鞍上には、あの武豊を迎えることになったのです。

武 豊

 (1704958)

父は「名人」と言われた武邦彦元騎手。
1989年当時、彼はまだデビューして3年目の新人でした。
デビューの1987年、新人最多勝記録更新。
1988年には菊花賞を史上最年少で勝ち、関西リーディングジョッキーを獲得。
新人ながら競馬会に名を轟かせ、「西に武あり」と言われました。
その後の活躍もめざましく、春の天皇賞を4連覇し「平成の盾男」と呼ばれるのでした。

第99回天皇賞(春) 京都芝3200m 4月29日

先頭はダイナカーペンター、
イナリワンは後方待機のまま2週目の向こう正面へ。
3コーナー付近から徐々に先行集団に追いつき、4コーナーを回った時にはトップに躍り出ます。
そして、そのまま後続を突き放し、5馬身差をつけてゴールイン!!
中央移籍後、照準を合わせた天皇賞を見事に圧勝したイナリワン、陣営の喜びは最高潮に達していました。
そして、ウィナーズサークルにはあの福永二三雄氏の姿もありました。
天皇賞(春)の栄冠を初めて手にした武豊騎手は、この後4連覇を達成します。
天馬イナリワンは、様々な人に様々な贈り物をしたのでした。

宝塚記念 阪神芝2200М 6月11日

「盾」取りに沸いた陣営は、年度前半のグランプリ「宝塚記念」を狙います。
イナリワンは2番人気。そして、鞍上は武豊。天皇賞コンビでGⅠ連取なるか!?

先頭に立ったのはダイナカーペンター。イナリワンは先行集団4・5番手の位置。3コーナーから4コーナーにかけて、イナリワンが早めに前に行き、2番手につけます。直線に入り、ダイナカーペンターを抜いてトップに立ったイナリワンに、フレッシュボイスが猛然と襲いかかります。が、イナリワンは抜かせず、逃げ切ってゴールイン!!
強豪馬が不在だったとはいえ、見事にGⅠを連勝したイナリワンと武豊騎手。しかし、このレースを最後に、彼がイナリワンに騎乗することはありませんでした。
この後イナリワンは、秋の戦線に向けて4か月の療養に入ります。

武豊騎手はイナリワンと出会ったことで、後々の騎手生活に多大な影響を与える、大きな大きなプレゼントをもらうことになります。それは、かねてからの希望だったアメリカ遠征を、馬主の保手浜氏が実現させてくれたことでした。彼はのちに、「イナリワンは僕に幸運をプレゼントしてくれた」と述べています。

最強のライバル出現

休養明け初戦で、イナリワンは「芦毛の怪物」と対決することになります。
あの「オグリキャップ」です。
イナリワンが中央入りしたこの年(1989年)2月に故障し、長い療養生活を送っていたため、春には対戦しなかったのです。
前方に立ちはだかる大きな壁。鞍上に柴田政人を迎えて、乗り越えることができるか。

毎日王冠 東京芝1800m 10月8日

ハナをきったのはレジェンドテイオー。イナリワンは後ろから2番手。すぐ前にはオグリキャップがいます。
長かった集団は4コーナーを回ると団子状態に。
直線を向いた時には、ほぼ横一線。
ラスト200mで外からイナリワンとオグリキャップが猛然と前を行く4頭を追います。ゴール前、2頭は他馬を差し切り、並んでゴール。
ハナの差でオグリキャップ1着。イナリワンは2着と敗れました。
単枠指定4頭、「史上最高の毎日王冠」と言われ、最後の直線200mを6頭が叩き合った壮絶なレース。敗れたとはいえ、イナリワン健在をアピールするには十分すぎる内容でした。

平成の3強、揃い踏み

のちに、「平成3強」と呼ばれた3頭、イナリワン・オグリキャップ・スーパークリークが、天皇賞(秋)で初対決します。しかし、イナリワンは、前走の毎日王冠後、体調を崩し、食も細くなって、とても万全の状態とはいえないまま、レースを迎えます。
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