恐るべきちえりのポテンシャル
陸上での基礎体力トレーニングをしばらく続けた後、続は初めてちえりをリンクに連れて行きます。そこでちえりがいきなり披露したのが、父親に教わったコンパルソリー。
コンパルソリーと言うのは、フィギュアスケートの語源となった、図形=フィギュアを描く規定種目です。(アイスダンスでは全然別の「コンパルソリーダンス」がある。)
以前は試合で大きな比重を占めていましたが、現在ではバッジテストで行なわれるのみとなりました。スケート技術の基礎として今も非常に重要な要素です。(2008年の改定で、ついに本来のコンパルソリーは廃止され、初級のセミサークルと、類似のセミサークル上でのステップ/ターンのみになった。)
コンパルソリーでは、片足で滑り出してそのまま片足で惰性で円を描いて元の場所まで戻ってきて、そこで足を替えて同じように反対側に円を描いて、その間にターンをしたり、カーブの方向を変えたりして規定の図形を滑ります。
滑っている時のエッジの乗り方や体の使い方が正しくないと、片足のまま戻ってくることが出来なくなりますし、正確なエッジさばきが出来ないと結果的に求められる図形は描けません。
コンパルソリーが正確に描ける、という事は正確なエッジに安定して乗れる(円を描き終わるまでずっと姿勢もキープできる)という事であり、フィギュアで要求される「エッジに乗る」技術の能力が明確に現れます。
伊藤みどり 88五輪 コンパルソリー規定 &インタビュー(日本語)
1988年カルガリーオリンピックで、コンパルソリー規定演技を行う、伊藤みどりさんの映像です。かつては存在した規定演技ですが、現在は廃止されています。
via www.youtube.com
実は高い基礎能力を備えていたちえりですが、この後も驚異の身体能力と順応力で、周囲を驚かせ続けます。
こうしてフィギュアスケートの才能を開花させていくちえり。しかし、その前に、高く大きな壁が立ちふさがります。
彼女の名はキャンティ秋山。わずか8歳で全日本ジュニアで優勝を果たし、現在、世界ジュニア選手権を連覇中という逸材です。その可憐な容姿と圧倒的な実力、そして気位の高さから「プリンセス」と呼ばれています。
そのプリンセスは、ちえりの演技に致命的な弱点を見つけたようですが……。
さて、ちえりたちはこの後「チェリー・プロジェクト」を完遂することができるのでしょうか?
そのプリンセスは、ちえりの演技に致命的な弱点を見つけたようですが……。
さて、ちえりたちはこの後「チェリー・プロジェクト」を完遂することができるのでしょうか?
おわりに
飛鳥ちえりは、続たち仲間のサポートを受けながら、数々の困難に立ち向かっていきます。その中で、ご紹介したシーンよりも遥かに驚きに満ちた展開を見せることもあります。その表現に戸惑う人もいるかもしれません。
空想科学研究所主任研究員の柳田理科雄先生は、ベストセラー「空想科学読本」のまえがきで、次のように語っておられます。
空想科学研究所主任研究員の柳田理科雄先生は、ベストセラー「空想科学読本」のまえがきで、次のように語っておられます。
あなたが私と同じように「科学の子」であるなら、本書を読み終えたとき、人間の創造力の豊かさをしみじみ感じるだろう。変身も巨大化も合体も、現在の科学からすれば少々無理があったり、激しく破綻していたりするが、だからこそ魅力的なのだと。科学ではとても実践できないことを、よくも思いついたものだ、と。本書であなたが笑ってしまう部分は、科学が人間にどうしても追いつけない、誇るべき夢の輝きなのである。
一方「プリンセス」キャンティ秋山は「四回転をとべる男子がいま世界に何人いると思うの?」と発言しましたが、この物語が発表されたのは90年代初頭。フィギュアスケートの世界は大きく進化しています。
2016年現在、男子シングルのトップ選手は各種四回転ジャンプを複数プログラムに組み込んでいます。2002年には、安藤美姫さんが女子スケーターとして初めて、競技会での四回転ジャンプ(四回転サルコウ)を成功させました。
時代をはるかに先取りしていたといえる「Theチェリー・プロジェクト」。「リアル飛鳥ちえり」のようなスケーターが、我々の前に登場する時は近いかもしれません。
2016年現在、男子シングルのトップ選手は各種四回転ジャンプを複数プログラムに組み込んでいます。2002年には、安藤美姫さんが女子スケーターとして初めて、競技会での四回転ジャンプ(四回転サルコウ)を成功させました。
時代をはるかに先取りしていたといえる「Theチェリー・プロジェクト」。「リアル飛鳥ちえり」のようなスケーターが、我々の前に登場する時は近いかもしれません。