「たとえクラシックレースを走れなくても!シンコウラブリイの駆け抜けた軌跡」
2016年12月5日 更新

「たとえクラシックレースを走れなくても!シンコウラブリイの駆け抜けた軌跡」

中央競馬において輸入された外国産馬を指す「マル外(まるがい)」というクラシック競争に出走できない立場で、しかも牝馬でありながら果敢に古馬に挑んだシンコウラブリイの競走馬としての歩みを振り返ります。

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「春よりもいろんな面で成長している。本音をいうと期待の半面、初距離、初コースとか不安も大きかった。でも、ケイコで教えたことを完ぺきに理解し結果に出してくれた。一生懸命走ろうとする気持ちの深さが、これまでの日本の馬とはひと味もふた味も違う」
クィーンステークス後の岡部騎手のコメント

初挑戦! GⅠマイルチャンピオンシップ

2000mのクィーンステークスでの勝利し中距離路線でも手ごたえを感じた陣営は、この秋の最大目標をジャパンカップ(東京競馬場 芝2400mGⅠ)に定めました。
ところがその前哨戦となった富士ステークス(東京競馬場 芝1800m)で、勝利こそしたがそのレース展開をみて藤沢調教師は2400mは距離が持たないと判断し、目標レースを連闘となるマイルチャンピオンシップ(京都競馬場 芝1600mGⅠ)へと切り替えました。
そうして挑んだ大一番のマイルチャンピオンシップですが、シンコウラブリイは鞍上岡部騎手&ここまで4連勝&4歳牝馬53キロの軽ハンデということもあり、1番人気に支持されました。

1992年 第9回 マイルチャンピオンシップ(GI) ダイタクヘリオス(岸滋彦)レコード

レースはイクノディクタスが逃げを打つ中、シンコウラブリイは好位から得意の展開で競馬をすすめるも、4コーナーで不利をうけ、前年度の覇者でもあるダイタクヘリオスを捉えきれず1馬身半差の2着、結果、歴戦の雄ダイタクヘリオスの貫録勝ちでした。
岡部は「4コーナーで少し不利はあったが、勝った馬は強い」と、潔く完敗を認めた。藤沢も「あの馬のスピードには脱帽です。不利があったことも確かだが、そういうことも含めての競馬だから言い訳にはならない。あれがなくても勝てなかったでしょう。4歳牝馬としては連闘でよく頑張ってくれたと思う。現時点では力が足りなかった。いい勉強をさせてもらいました」と勝者を讃えた。
6戦4勝うち重賞3勝で4歳を終え、翌年の安田記念を春の最大目標に休養に入ったシンコウラブリイ。
古馬と激戦を繰り広げたマイルチャンピオンシップの疲れは癒えたかに思えましたが、その反動は思いのほか尾をひき、春の初戦となった京王杯スプリングカップ(東京競馬場 芝1400mGⅡ)でヤマニンゼファーの後塵を拝し2着に終わります。

春の最大目標 安田記念

一度叩いてむかえた春の最大の目標、安田記念(東京競馬場 芝1600mGⅠ)ですが、この年から外国馬の参加が解禁となり、国際レースとなりました。シンコウラブリイの人気は同世代のライバル・ニシノフラワー、前走敗れたヤマニンゼファーに次ぐ3番人気に甘んじます。
レースは淀みない展開からヤマニンゼファーが抜け出しそのまま府中の長い直線を駆け抜け見事に優勝。
シンコウラブリイはイクノディクタスにかわされ3着に終わりました。

1993年 第43回 安田記念(GI) ヤマニンゼファー(柴田善臣)

春競馬を2着、3着に終わったシンコウラブリイですが、激戦の疲れは重く、次走の札幌日経オープン(札幌競馬場 芝1800m)でもなんとか勝利はしましたが、そのまま休養に入りました。

充実の5歳・秋~そして引退へ

5歳の秋を迎え、精神的にもたくましく成長したシンコウラブリイは、この秋の最大の目標レースを前年苦杯をなめたマイルチャンピオンシップに定め、初戦の毎日王冠(東京競馬場 芝1800mGⅡ)へ出走しました。
結果はセキテイリュウオー、ナイスネイチャらを抑え見事に勝利。
続くスワンステークス(京都競馬場 芝1400mGⅡ)でも、迫るステージヒーローを封じて勝利し、自身初のGⅠ制覇に向け弾みをつけました。

マイルチャンピオンシップでGⅠ初制覇

1993年 第10回 マイルチャンピオンシップ(GI) シンコウラブリイ(岡部幸雄)

そして迎えたマイルチャンピオンシップ。前年の悔しさを晴らすとともに、この一年で大きく成長した自身の力を最大限に発揮し集大成とするべく挑んだレースでした。
レース当日は激しい豪雨となり、馬場は最悪のコンディションの不良馬場。
このレースでも堂々の1番人気に押されたシンコウラブリイは、泥濘などまったく苦にもせず、持てる力を全て発揮して見事にGⅠを制覇。自らの有終の美を優勝で締めくくりました。
岡部は「なかなか届かなかったGIをようやく勝てた。これで関係者、応援してくれたファンに恩返しができたと思う。ホッとしました。直前の雨が味方してくれたが、それ以上に馬が偉かった。最後のレースだと知っていたかのように、渾身の力を発揮してくれた。これまでで一番いいレースをしてくれた」と、感情を抑えながら愛馬を褒めたたえた。
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