「たとえクラシックレースを走れなくても!シンコウラブリイの駆け抜けた軌跡」
2016年12月5日 更新

「たとえクラシックレースを走れなくても!シンコウラブリイの駆け抜けた軌跡」

中央競馬において輸入された外国産馬を指す「マル外(まるがい)」というクラシック競争に出走できない立場で、しかも牝馬でありながら果敢に古馬に挑んだシンコウラブリイの競走馬としての歩みを振り返ります。

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シンコウラブリイ誕生~競走馬デビュー

シンコウラブリイは、1989年2月2日に父Caerleon(カーリアン) 母ハッピートレイルズの仔としてアイルランドで生まれました。
3歳の春まで生産者であるアイルランドのファイアストン夫妻のもとで育成され、その後、日本人馬主に買われたシンコウラブリイは日本で競走馬デビューすべく、美浦の藤沢和雄厩舎に入厩しました。
日本への輸入後、検疫を終えたシンコウラブリイは藤沢厩舎に入厩後、わずか一か月ほどでデビュー戦をむかえました。
「気がよさそうな牝馬だったが、当時は父のカーリアンは日本では知られている馬ではなかった。でも、本馬場に入れた時の動きが素晴らしくて、いきなり特別に登録したくらい。これはという感触があった。普通に新馬から使うことになって、たまたま岡部騎手が有力馬を先に頼まれていたが、だいたい行けるだろうと思っていた」
シンコウラブリイのデビュー戦を前にした藤沢調教師のコメント

衝撃のデビュー戦

シンコウラブリイのデビュー戦は11月2日東京競馬場 芝1600mでした。鞍上は藤沢厩舎所属の若手 橋本広喜騎手。
このデビュー戦は持ったままで4馬身差の楽勝で、そのポテンシャルの高さを感じさせる内容でした。
デビュー2戦目に選ばれたのは中1週の福島3歳ステークス(福島競馬場 芝1200m)でした。
デビュー戦の勝ちっぷりもあり、断然の1番人気に支持されたシンコウラブリイは、ここでも期待に応えて見事レコード勝ちしデビュー2連勝を飾りました。
そして迎えた3歳牝馬女王決定戦 阪神3歳牝馬ステークス(阪神競馬場 芝1600mGⅠ)では、ニシノフラワー、サンエイサンキューとの激しい叩き合いの末3着に敗れました。
「いいアクションで一生懸命走るが、まだ競馬が上手じゃない。気持ちに余裕が生まれて、ゴールがどこにあるか分かるようになれば相当な馬になる」
阪神3歳牝馬ステークスを終えた岡部騎手のコメント
シンコウラブリイ (1792541)

マル外(外国産馬)の悲運をバネに・・・

当時、JRAの規定でマル外(外国産馬)はクラシック5大競走(皐月賞・日本ダービー・菊花賞・桜花賞・オークス)への出走が認められていませんでした。
外国産馬のシンコウラブリイも例外ではなく、クラシックとは別の独自路線を進むこととなります。
前走でしのぎを削ったライバル、ニシノフラワー・サンエイサンキューらと桜花賞、オークスでの競演を見たかったファンもきっと多かったと思います。
4歳初戦に選ばれたのはカーネーションカップ(東京競馬場 芝1600m)で鞍上は前走からコンビを組む名手岡部幸雄騎手です。
阪神3歳牝馬ステークス3着の実績からこのレースで1番人気に支持されましたが、約半年のブランクもあり思うような競馬ができず6着と惨敗しました。
「私としては調整法は間違っていなかったと思う。仕上がっていると判断して出走させたが、息がもちませんでした。判断が甘かった。大失敗です」
藤沢調教師のコメント

重賞レース初制覇

この春の最大の目標でもある次走のニュージーランドトロフィ4歳ステークス(東京競馬場 芝1600mGⅡ)まで、中1週しかありませんでしたが陣営は見事に立て直し、重賞4連勝で断然の1番人気に支持されていたシンコウラブリイと同じマル外馬ヒシマサルの猛追を振り切り、見事に優勝しました。
この重賞制覇はシンコウラブリイはもちろん、藤沢調教師にとっても初めての重賞勝利となりました。
「前走の汚名返上のためにも、なんとかしていい結果を出したかった。岡部ジョッキーが、馬をなだめながら巧く乗ってくれた。スピードが勝っている馬なので一歩間違ったらスプリンターで終わってしまう危険がありましたからね。使いたいところをオーナーが我慢してくださって、冬場に思い切って休ませたのが吉と出たと思う。きょうの勝利は本当に嬉しい」
前走見事な勝利で初重賞タイトルを手にしたシンコウラブリイは、続くラジオ短波賞(福島競馬場 芝1800mGⅢ)でも鮮やかな勝利を飾り、重賞2連勝を達成。
その後、休養に入り秋競馬に備え充電することとなりました。

秋競馬開幕!

牧場でリフレッシュして戻ってきたシンコウラブリイの秋初戦に選ばれたのは、クィーンステークス(中山競馬場 芝2000mGⅢ)でした。
この2000mという距離はシンコウラブリイにとって初めて挑戦する距離でもあり、短距離マイル路線でいくか、中距離路線でいくか、今後の進むべき道を占う意味でも大事な一戦となりました。
そして迎えたレース当日、単勝1.4倍という断然の一番人気に支持されたシンコウラブリイは、周囲の心配をよそに、まったく危なげないレース展開で2着パーシャンスポットと3馬身半差の圧勝。
2000mの距離にも充分に適応できることを証明しました。
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