あれから20年・・・1997年11月16日『ジョホールバルの歓喜』に至る激闘史を時間軸に沿って振り返る
2017年11月16日 更新

あれから20年・・・1997年11月16日『ジョホールバルの歓喜』に至る激闘史を時間軸に沿って振り返る

ワールドカップ出場が夢のまた夢だった時代があった。それはついこないだのようだが、1997年11月16日の『ジョホールバルの歓喜』から20年が経つ。サッカー日本代表の1997年アジア最終予選を時間軸に沿って振り返ってみる。

5,549 view
マレーシア・ジョホールバル。中立地での一発勝負となったアジア第3代表決定戦。

対戦相手のイランは、飛行機での長旅やエースが累積警告で出場停止と不利な状況の中、試合に臨んだが、情報戦で日本をかく乱。前日練習で車椅子に乗っていたコダダド・アジジが何事もなかったようにスタメンで出場した。

日本は出場停止明けのカズと中山のツートップが先発。試合の4日前に母親を病気で亡くした呂比須は出身地であるブラジルには戻らず、気丈にもチームに帯同。ベンチで出場機会を狙っていた。

スタジアムはまるで日本のホームかのように「ニッポン」コールが包んでいた。そんな中、試合開始の笛が鳴った。

試合は前半から両チームとも激しい攻防となり、どちらにもチャンスが訪れるも得点は生まれず、やや重苦しい展開となっていた。
しかし、前半終了間際の37分、イランのシュートがポストを直撃。あわや失点というシーンをなんとか凌ぐと、それまで日本の攻撃を牽引し、多くのキラーパスを供給していた中田が得点を演出する。
名波からの柔らかいパスを中田がトラップ、素早くターンをし、イランゴール前の中山へパス。中山は走り込みながら、キーパーの脇を抜くシュート。それがゴンゴールとなり、待望の先制点を挙げた。

日本vsイラン ジョホールバルの歓喜

1-0のリードで折り返した日本だったが、後半開始25秒にダエイのシュートのこぼれ球をアジジに押し込まれ同点とされてしまう。さらに後半14分にはダエイがヘディングシュートを決めて2-1と逆転した。

後半18分、岡田監督は2トップのカズと中山に代えてFW・城彰二と呂比須を同時投入。同時に3バックへと変更した。カズにとって最終予選で初めての途中交代となった。

すると、交代策がハマり、後半31分中田のピンポイントクロスに城がヘディングシュートを決め、2-2の同点にした。疲れの色が隠せないイラン選手は徐々に運動量が落ちていく。だが、決勝点を奪えず、後半が終了。ゴールデンゴール方式の延長戦に突入した。

そして、延長前半にこれまで出場機会のなかったFW・岡野雅行がピッチに立った。
WCCF 09-10 J-LE マサユキ・オカノ

WCCF 09-10 J-LE マサユキ・オカノ

快足FWで知られる野人・岡野だったが、中田から幾度ものパスに緊張からかシュートミスや消極的なプレイで絶好の得点機会を失ってしまう。
GKとの1対1でもシュートを打たず、マークのつく中田へパスをしてしまい、チャンスを逸するなど、明らかに異様なスタジアムの雰囲気にのまれていた。”勝てば終わり”ではなく、”負けたら終わり”という精神状態が岡野を支配していたように見えた。

延長後半5分、城はイランゴール前で相手GKと激しく接触。その後9分にも相手GKは日本選手と交錯し、左腕を負傷。まさに死闘といった様相を呈し、日本サポーターの日本コールがますます大きくなっていった。

そして、運命の瞬間が訪れた。

日本のゴール前でダエイが放ったシュートがクロスバーの上をスレスレで通過した。その数十秒後、PK戦も意識し始めた延長後半13分に中田が華麗なドリブルで持ち上がり、ペナルティエリア直前からミドルシュート。GKがなんとかはじいたこぼれ球に岡野が走り込んだ。

岡野がスライディングしながら右足でゴールに押し込む。
直後、岡田監督やスタッフ、ベンチメンバーが一斉にピッチへ飛び出し、悲願のワールドカップ初出場決定に喜びを爆発させた。
スライディングでシュートを放つ岡野

スライディングでシュートを放つ岡野

「外しまくってたんで、絶対入れてやろうと思って、良かったです」と試合直後のインタビューで語った岡野。それに対し中田は「やっと決めてくれたか」と、全得点に絡みワールドカップへと導いた選手とは思えないクールなコメントを残している。

中田は中山への1点目のパスを出した瞬間に、ボールではなく、審判を見てオフサイドかをチェックし、岡野のゴールデンゴールを生んだミドルシュートも、GKの負傷した左手側へあえて打つなど舌を巻くほどの冷静沈着さだった。

この時、中田は二十歳。以降、2006年の引退まで日本代表を牽引していく事となる。
ジョホールバル歓喜の全記録 : ワールドカップアジア最...

ジョホールバル歓喜の全記録 : ワールドカップアジア最終予選 日本VSイラン

48 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

「ジョホールバルの歓喜」から20年!決勝ゴールの岡野氏を迎えたトークイベントが6月1日に開催!

「ジョホールバルの歓喜」から20年!決勝ゴールの岡野氏を迎えたトークイベントが6月1日に開催!

サッカー男子日本代表が、1997年に悲願のワールドカップ出場を決めてから20年という節目に合わせ、トークイベント「朝日新聞紙面でみる『炎の70日』と『ジョホールバルの歓喜』」が6月1日(木)に開催される。ゲストにはイラン代表との試合で、延長戦で決勝ゴールを決めた岡野雅行さんが招かれている。
フランスW杯直前、Jリーグデビューから11日後の高校生が日本代表デビュー!市川大祐!

フランスW杯直前、Jリーグデビューから11日後の高校生が日本代表デビュー!市川大祐!

1998年のフランスワールドカップを前に、高校生ながら代表へ招集された清水エスパルスの市川大祐。同じく10代だった天才・小野伸二と共に日本代表の試合に出場。カズと同じく、惜しくもワールドカップ直前に代表落ちするも日韓ワールドカップで活躍した。
ひで語録 | 2,739 view
「ドーハの悲劇」から30年が経過!ラモス瑠偉公認のコラボアイテムが発売!ドキュメンタリー「ドーハ1993+」も話題に!

「ドーハの悲劇」から30年が経過!ラモス瑠偉公認のコラボアイテムが発売!ドキュメンタリー「ドーハ1993+」も話題に!

オンラインショップ「キーレジェンド」にて、ドーハの悲劇を象徴するシーンをイラストデザインした「ラモス瑠偉」公認のコラボアイテム「VINTAGE CULTURE BASE / FOOTBALL COLLECTION」の第1弾(Tシャツ、プルパーカー)が現在好評発売中となっています。
隣人速報 | 165 view
まだ現役!?引退していない日本スポーツ界のレジェンド達

まだ現役!?引退していない日本スポーツ界のレジェンド達

日本のスポーツ界において輝かしい成績をおさめたレジェンド達の中で、今も現役にこだわり、引退を明言していないアスリートを紹介します。
ひで語録 | 1,789 view
GON 中山雅史 本能むき出しの点取り屋 ハットトリック男 熱血、不器用、猪突猛進、侍エースストライカー

GON 中山雅史 本能むき出しの点取り屋 ハットトリック男 熱血、不器用、猪突猛進、侍エースストライカー

Q.好きな言葉は?「力」 Q.欲しいものは?「膝の軟骨、半月板、テクニック」Q. 中山雅史にあるものは?「負けず嫌いとサッカーを愛する気持ちだけ。ほかになにもないから中山雅史だった。なにもないからなにかを得ようともがき苦しみ、もがき苦しむことから抜け出すために、手を伸ばし、その先をつかもうと努力した。ずっとその繰り返しだった」
RAOH | 2,164 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト