3月11日、北関東の大学病院を受診。
この病院は、陽子線を使った治療を実践していた。
竹原慎二はそれによって膀胱の温存治療を期待していた。
しかし医師は、温存治療を行った場合、治療途中で転移が起こってしまう危険性があり、1番根治が期待できる膀胱全摘をすすめた。
「どうか過去ではなくこれからできることを考えてください。
もしここで手術を希望するなら予定に入れておきます。
とりあえず来週、外来予約を入れておきますのでよく考えて決めてください。
予約は電話でキャンセルしてもらってもかまいません。
ただしどこで治療を受けるにしてもあまり時間をかけてはいけない。
今週、来週あたりまでには結論を出すべきです」
竹原慎二は黙って聞いているだけだった。
なんとか膀胱全摘を避けたいという希望の光は消え、落ち込んだ。
2日後の3月13日、もうひとつの病院を受診。
この病院では、膀胱の部分切除によって浸潤ガンの膀胱温存を試みていた。
しかしこの病院の医師も、膀胱全摘しかないといい、
「このまま何もしなければ、最悪1年」
と告げた。
竹原慎二には、時間も手段もなく、膀胱温存はあきらめるしかなかった。
膀胱癌の多くは、「表在性ガン」で、早い段階で血尿が出ることが多く、早期発見されやすく、悪性度も転移の可能性も低く生存率が高い。
しかし竹原慎二は「上皮内ガン」で、血尿のサインは出ず、症状は排尿痛で膀胱炎と似ている。
しかし悪性度が高いことが多い。
竹原慎二は、1年間、尿検査をし続け、菌が出なかったため、発見が遅れた。
念のために細胞診検査をしていれば、早期発見されていた可能性が高かった。
後悔、悔しさ、不安、恐怖がこみ上げてきて涙が出た。
この病院は、陽子線を使った治療を実践していた。
竹原慎二はそれによって膀胱の温存治療を期待していた。
しかし医師は、温存治療を行った場合、治療途中で転移が起こってしまう危険性があり、1番根治が期待できる膀胱全摘をすすめた。
「どうか過去ではなくこれからできることを考えてください。
もしここで手術を希望するなら予定に入れておきます。
とりあえず来週、外来予約を入れておきますのでよく考えて決めてください。
予約は電話でキャンセルしてもらってもかまいません。
ただしどこで治療を受けるにしてもあまり時間をかけてはいけない。
今週、来週あたりまでには結論を出すべきです」
竹原慎二は黙って聞いているだけだった。
なんとか膀胱全摘を避けたいという希望の光は消え、落ち込んだ。
2日後の3月13日、もうひとつの病院を受診。
この病院では、膀胱の部分切除によって浸潤ガンの膀胱温存を試みていた。
しかしこの病院の医師も、膀胱全摘しかないといい、
「このまま何もしなければ、最悪1年」
と告げた。
竹原慎二には、時間も手段もなく、膀胱温存はあきらめるしかなかった。
膀胱癌の多くは、「表在性ガン」で、早い段階で血尿が出ることが多く、早期発見されやすく、悪性度も転移の可能性も低く生存率が高い。
しかし竹原慎二は「上皮内ガン」で、血尿のサインは出ず、症状は排尿痛で膀胱炎と似ている。
しかし悪性度が高いことが多い。
竹原慎二は、1年間、尿検査をし続け、菌が出なかったため、発見が遅れた。
念のために細胞診検査をしていれば、早期発見されていた可能性が高かった。
後悔、悔しさ、不安、恐怖がこみ上げてきて涙が出た。
免疫療法
「免疫療法」5拠点病院、非臨床研究で実施
via www.youtube.com
膀胱全摘しか道はない。
あとはそれをどこの病院で行うかだった。
また手術後に、自己の免疫力を活性化、強化させてガン細胞を退治する「免疫治療」を受けようと考えた。
3月15日、免疫治療のクリニックを訪れた。
クリニックの医師は
「検査手術したときに採取した組織のプレパラートを借りてきてください」
といった。
治療を受ける前にリンパ球を採取し、それを培養し竹原慎二の体に戻すが、その前に組織を検査して分子標的薬が効くタイプのガンかどうか調べるという。
3月17日、セカンドオピニオン、サードオピニオンの報告書、クリニックの依頼書を持って、B医師の病院にいった。
B医師は、免疫治療について
「そういうのはねえ、エビデンス(科学的根拠)がないんだ」
といったが、何もしなければ1年の竹原慎二はやることをきめていた。
(なにかといやぁ、エビデンス、エビデンスとうるさいんじゃ!
なんじゃそのエビデンスってやつは?
それがなんだっていうんじゃ!
ないなら自分でエビデンスとやらをつくってやるわい)
またB医師は、今後は抗ガン剤で徹底的に叩くという治療方針を示した。
(この人を信用しても大丈夫なのか?)
そう思ったものの、迷っている暇はなく、竹原慎二は、3月25日に入院の予約を入れた。
あとはそれをどこの病院で行うかだった。
また手術後に、自己の免疫力を活性化、強化させてガン細胞を退治する「免疫治療」を受けようと考えた。
3月15日、免疫治療のクリニックを訪れた。
クリニックの医師は
「検査手術したときに採取した組織のプレパラートを借りてきてください」
といった。
治療を受ける前にリンパ球を採取し、それを培養し竹原慎二の体に戻すが、その前に組織を検査して分子標的薬が効くタイプのガンかどうか調べるという。
3月17日、セカンドオピニオン、サードオピニオンの報告書、クリニックの依頼書を持って、B医師の病院にいった。
B医師は、免疫治療について
「そういうのはねえ、エビデンス(科学的根拠)がないんだ」
といったが、何もしなければ1年の竹原慎二はやることをきめていた。
(なにかといやぁ、エビデンス、エビデンスとうるさいんじゃ!
なんじゃそのエビデンスってやつは?
それがなんだっていうんじゃ!
ないなら自分でエビデンスとやらをつくってやるわい)
またB医師は、今後は抗ガン剤で徹底的に叩くという治療方針を示した。
(この人を信用しても大丈夫なのか?)
そう思ったものの、迷っている暇はなく、竹原慎二は、3月25日に入院の予約を入れた。
東大病院(東京大学医学部附属病院)へ
オヤジファイト
via www.youtube.com
その直後、畑山隆則から電話があった。
「俺、竹さんのこと、早川先生に相談してみたんだけど、東大病院はどうかっていうんだ」
早川先生とは、早川浩太郎という皮膚科の医師で、「オヤジファイト」というアマチュアの試合に出たこともあるほどボクシング好きだった。
「入院日も決まったし、もう遅いわ」
「そんなこといわず話だけでも聞いてみたらどう?」
3月23日、早川医師、早川の友人で内科の竹入医師、竹原慎二と妻の4人は会って話した。
「なんてひどい話なんだ」
これまでのいきさつを聞いて早川医師は怒った。
そして竹入医師は、翌日、東大病院で受診できるように手配した。
「俺、竹さんのこと、早川先生に相談してみたんだけど、東大病院はどうかっていうんだ」
早川先生とは、早川浩太郎という皮膚科の医師で、「オヤジファイト」というアマチュアの試合に出たこともあるほどボクシング好きだった。
「入院日も決まったし、もう遅いわ」
「そんなこといわず話だけでも聞いてみたらどう?」
3月23日、早川医師、早川の友人で内科の竹入医師、竹原慎二と妻の4人は会って話した。
「なんてひどい話なんだ」
これまでのいきさつを聞いて早川医師は怒った。
そして竹入医師は、翌日、東大病院で受診できるように手配した。
via ja.wikipedia.org
3月24日、竹原慎二は東大病院で初診を受けた。
「この画像をみる限り、浸潤度はT2にみえる。
みようによってはT3にもみえなくはないが、この画像だけではこれ以上は断定できない。
治療計画はT2なら術前抗ガン剤なしで手術。
T3なら術前抗ガン剤の後、手術。
最終判断は(以前の病院で)先週撮ったCTとMRIをみて判断する」
この病院の医師は、浸潤度が浅く抗ガン剤を使わない場合は、すぐに手術の準備に入るが、先に抗ガン剤を使う場合は、体を回復させるために1ヵ月ほど空けなくてはいけないという。
また抗ガン剤は、2クール(1クール=3~4週間)やって、そこでCTを撮って結果次第で、もう1クール追加か、手術に踏み切るという。
「尿路変更は選べますか?」
「今のところ尿道にガンはないようだから医学的にはどちらも選べます」
「尿道を残すと転移の確率は上がりますか?」
「まあ残す以上、その可能性はゼロではない。
だが上皮内ガンからの浸潤度が尿道への転移の可能性は高いとは思えないな」
膀胱ガンなどで膀胱を適出した場合、尿路を再建する必要がある。
(尿路変向術)
再建方法として、回腸導管造設術、尿管皮膚瘻造設術、自排尿型新膀胱造設術の3つがあり、ガンのある位置、病態、全身状態などによって選択される。
(この病院で治療を受けたい)
竹原慎二は思った。
これまでで1番希望を聞いてくれたからである。
「先生、実は僕、明日から入院予定が入っていて、抗ガン剤を4クールやるっていわれてるんです。
だけど僕はここで治療を受けたいです。
先生、どうか助けてください。
お願いします」
「わかりました。
ではとりあえず3月28日から入院予約を入れましょう。
その前に明後日(3月26日)に前の病院からCTとMRIをもらって外来に来られますか?」
「ここで確認していいですか?」
そういって妻は診察室からB医師の病院に電話した。
「明日入院予定の竹原です。
急に申し訳ないですが明日からの入院キャンセルしてください。
転院します。
昨日撮ったCTとMRIをもらいにできるだけ早く行きたいのですが、いつ行けばいいでしょうか?」
「この画像をみる限り、浸潤度はT2にみえる。
みようによってはT3にもみえなくはないが、この画像だけではこれ以上は断定できない。
治療計画はT2なら術前抗ガン剤なしで手術。
T3なら術前抗ガン剤の後、手術。
最終判断は(以前の病院で)先週撮ったCTとMRIをみて判断する」
この病院の医師は、浸潤度が浅く抗ガン剤を使わない場合は、すぐに手術の準備に入るが、先に抗ガン剤を使う場合は、体を回復させるために1ヵ月ほど空けなくてはいけないという。
また抗ガン剤は、2クール(1クール=3~4週間)やって、そこでCTを撮って結果次第で、もう1クール追加か、手術に踏み切るという。
「尿路変更は選べますか?」
「今のところ尿道にガンはないようだから医学的にはどちらも選べます」
「尿道を残すと転移の確率は上がりますか?」
「まあ残す以上、その可能性はゼロではない。
だが上皮内ガンからの浸潤度が尿道への転移の可能性は高いとは思えないな」
膀胱ガンなどで膀胱を適出した場合、尿路を再建する必要がある。
(尿路変向術)
再建方法として、回腸導管造設術、尿管皮膚瘻造設術、自排尿型新膀胱造設術の3つがあり、ガンのある位置、病態、全身状態などによって選択される。
(この病院で治療を受けたい)
竹原慎二は思った。
これまでで1番希望を聞いてくれたからである。
「先生、実は僕、明日から入院予定が入っていて、抗ガン剤を4クールやるっていわれてるんです。
だけど僕はここで治療を受けたいです。
先生、どうか助けてください。
お願いします」
「わかりました。
ではとりあえず3月28日から入院予約を入れましょう。
その前に明後日(3月26日)に前の病院からCTとMRIをもらって外来に来られますか?」
「ここで確認していいですか?」
そういって妻は診察室からB医師の病院に電話した。
「明日入院予定の竹原です。
急に申し訳ないですが明日からの入院キャンセルしてください。
転院します。
昨日撮ったCTとMRIをもらいにできるだけ早く行きたいのですが、いつ行けばいいでしょうか?」
絶対に勝つ
東大病院への道のり(本郷三丁目から徒歩編)
via www.youtube.com
東大病院を出て駅まで歩いているとき、A医師から電話が入った。
「どうして?
明日からの入院をキャンセルしたんだって?
東大行くの?
どういうつもり?
まだ膀胱温存したいとか甘いこといってんの?
もう命の問題なんだよ。
そろそろガンと向き合わないとダメじゃないか」
竹原慎二はA医師にもB医師にもいいたいことはいっぱいあった。
しかし今は治療が先だった。
(この人は自分がガンを見落としたことで僕が命の危険にさらされていることに気づいてないのか?
誰のせいでこうなっていると思っているのか。
ガンとはとっくに向き合っとる!
向き合えないのはお前らとじゃ!)
その夜、妻はB医師に電話した。
まず急な入院キャンセルをわびた。
そして長い間、A医師が発見することができなかったガンを見つけてくれたことを感謝した。
「ただこちらも命がかかっているので妥協はできません。
そちらの病院に命を預けるわけにはいきません。
だから転院を決めました。
主治医のあなたからではなくA先生から先に不確かな情報を聞かされて本当に苦しみました」
「A先生は紹介者だったから知らせたのだが、でもはやりまずかった」
「どうして?
明日からの入院をキャンセルしたんだって?
東大行くの?
どういうつもり?
まだ膀胱温存したいとか甘いこといってんの?
もう命の問題なんだよ。
そろそろガンと向き合わないとダメじゃないか」
竹原慎二はA医師にもB医師にもいいたいことはいっぱいあった。
しかし今は治療が先だった。
(この人は自分がガンを見落としたことで僕が命の危険にさらされていることに気づいてないのか?
誰のせいでこうなっていると思っているのか。
ガンとはとっくに向き合っとる!
向き合えないのはお前らとじゃ!)
その夜、妻はB医師に電話した。
まず急な入院キャンセルをわびた。
そして長い間、A医師が発見することができなかったガンを見つけてくれたことを感謝した。
「ただこちらも命がかかっているので妥協はできません。
そちらの病院に命を預けるわけにはいきません。
だから転院を決めました。
主治医のあなたからではなくA先生から先に不確かな情報を聞かされて本当に苦しみました」
「A先生は紹介者だったから知らせたのだが、でもはやりまずかった」
【上等だこら!】竹原慎二 ド迫力KO トップ10+α TOP 10 Knockouts of Shinji Takehara
via www.youtube.com
また妻は、竹原慎二にいった。
「ノートにプラスになる言葉ややりたいことを書いてみたらどう?」
竹原慎二は、広島県でヤンチャをし過ぎ、一念発起し、プロボクサーになるために16歳で上京した。
7時から内装業の仕事をやり、仕事後、ジムで練習し、仕事場の先輩と2人で暮らすアパートに帰った。
広島に帰りたくなったり、練習をサボりたくなったが、
「絶対に世界チャンピオンになる」
「絶対に勝つ」
と何度も何度も心の中でつぶやいたり、実際に口に出して自分に言い聞かせ、頑張った。
試合のポスターにも「勝つ!勝つ!」と書いた。
T2~3 N2 M0 ステージ4 5年生存率25~33%
Bladder Cancer Treatments
via www.youtube.com
2014年3月28日、竹原慎二は、東大病院に入院した。
竹原慎二の膀胱ガンは、T2~3 N2 M0 ステージ4と診断された。
Tは浸潤度、Nはリンパ節への転移の数、Mは遠隔転移の数で右側の骨盤リンパ節に2つの転移があった。
このレベルの5年生存率は25~33%といわれていた。
しかし竹原慎二は元世界チャンピオン、世界最強になった男である。
(所詮、他人の集計だ。
少なくとも自分はまだこの中にカウントされていない。
極端なことをいえば、たとえ生存率が80%あったとしても自分が残りの20%に入ってしまえば死亡率100%なわけで、どちらに入るかなんてわからない。
だいたい僕は今までずっと良くも悪くも多数派に属さない人生を送ってきた。
今更こんな統計が当てはまるのか?)
竹原慎二が世界タイトルに挑戦したとき、誰もが『ミドル級の世界タイトルなんて獲れるはずがない』といった。
だからテレビの生中継もなく深夜に録画放送された。
(あのとき僕が世界チャンピオンになれる確率なんて何%あっただろう?
それに比べたら25%なんてむちゃくちゃ高いじゃないか)
「勝てる」
「大丈夫」
「絶対勝つ」
竹原慎二はノートに書き続けた。
竹原慎二の膀胱ガンは、T2~3 N2 M0 ステージ4と診断された。
Tは浸潤度、Nはリンパ節への転移の数、Mは遠隔転移の数で右側の骨盤リンパ節に2つの転移があった。
このレベルの5年生存率は25~33%といわれていた。
しかし竹原慎二は元世界チャンピオン、世界最強になった男である。
(所詮、他人の集計だ。
少なくとも自分はまだこの中にカウントされていない。
極端なことをいえば、たとえ生存率が80%あったとしても自分が残りの20%に入ってしまえば死亡率100%なわけで、どちらに入るかなんてわからない。
だいたい僕は今までずっと良くも悪くも多数派に属さない人生を送ってきた。
今更こんな統計が当てはまるのか?)
竹原慎二が世界タイトルに挑戦したとき、誰もが『ミドル級の世界タイトルなんて獲れるはずがない』といった。
だからテレビの生中継もなく深夜に録画放送された。
(あのとき僕が世界チャンピオンになれる確率なんて何%あっただろう?
それに比べたら25%なんてむちゃくちゃ高いじゃないか)
「勝てる」
「大丈夫」
「絶対勝つ」
竹原慎二はノートに書き続けた。
ガン≠死
Night Ward CCTV Dome Camera Starlight Colour picture at night time True day and night
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また抗ガン剤治療は、GC療法が採用された。
G=ジェムザール。
点滴で行う治療薬で、ガン細胞の増殖に必要な物質とよく似た構造をしているため、ガン細胞の中に取り込み細胞分裂に必要なDNAの合成を阻害してガン細胞を死滅させ、ガンの
分裂や増殖を抑える。
C=シスプラチン。
点滴で行う治療薬で、プラチナ(白金)を含む金属化合物。
ガン細胞内のDNAと結合してガン細胞の分裂を止め、やがて死滅させる。
副作用に腎臓の働きを悪化させるため、腎臓を保護するために水分補給の点滴を行う。
1日目 - C
2日目 - G
8日目 - G
以上を1クールとして2クール行い、CTを撮影し効果をみて、結果次第で1クール追加するか検討するという。
1クール、たった3回の抗ガン剤治療。
竹原慎二は
(こんなの余裕だわ)
と思った。
しかし
(もし抗ガン剤が効かず、遠隔転移が起こってしまえば、手術で膀胱をとる意味がなくなってしまう)
ネガティブなことを悶々と考え、夜は眠れなかった。
(いったい何がこわいんだろう?
死ぬことか?
肉体的な痛みか?
社会的な孤立か?)
恐怖の原因を探っていくと、その答えは、
(自分がこれからどう弱っていき、どう死んでいくか)
ということだった。
それがわかった竹原慎二は、ガンに立ち向かおうとした。
それが恐怖心を和らげる方法だと思ったのだ。
自分のガンの正体を知ろうと、ネットで情報を求め、本を読み、不安や不明なことはなんでも医者に訊ねた。
そしてどんな名医でも14%、一般的には30%くらいの誤診があることを知った。
何より「ガン=死」ではないと確信した。
「ガン≠死」
竹原慎二は前向きに笑っていこうと決めた。
G=ジェムザール。
点滴で行う治療薬で、ガン細胞の増殖に必要な物質とよく似た構造をしているため、ガン細胞の中に取り込み細胞分裂に必要なDNAの合成を阻害してガン細胞を死滅させ、ガンの
分裂や増殖を抑える。
C=シスプラチン。
点滴で行う治療薬で、プラチナ(白金)を含む金属化合物。
ガン細胞内のDNAと結合してガン細胞の分裂を止め、やがて死滅させる。
副作用に腎臓の働きを悪化させるため、腎臓を保護するために水分補給の点滴を行う。
1日目 - C
2日目 - G
8日目 - G
以上を1クールとして2クール行い、CTを撮影し効果をみて、結果次第で1クール追加するか検討するという。
1クール、たった3回の抗ガン剤治療。
竹原慎二は
(こんなの余裕だわ)
と思った。
しかし
(もし抗ガン剤が効かず、遠隔転移が起こってしまえば、手術で膀胱をとる意味がなくなってしまう)
ネガティブなことを悶々と考え、夜は眠れなかった。
(いったい何がこわいんだろう?
死ぬことか?
肉体的な痛みか?
社会的な孤立か?)
恐怖の原因を探っていくと、その答えは、
(自分がこれからどう弱っていき、どう死んでいくか)
ということだった。
それがわかった竹原慎二は、ガンに立ち向かおうとした。
それが恐怖心を和らげる方法だと思ったのだ。
自分のガンの正体を知ろうと、ネットで情報を求め、本を読み、不安や不明なことはなんでも医者に訊ねた。
そしてどんな名医でも14%、一般的には30%くらいの誤診があることを知った。
何より「ガン=死」ではないと確信した。
「ガン≠死」
竹原慎二は前向きに笑っていこうと決めた。