【ジョージ・フォアマン】45歳で世界ヘビー級王者に返り咲いた伝説のボクサー
2020年2月7日 更新

【ジョージ・フォアマン】45歳で世界ヘビー級王者に返り咲いた伝説のボクサー

象をも倒すといわれたパンチ力で最強と呼ばれながら『キンシャサの奇跡』でモハメド・アリに敗れたジョージ・フォアマン。 一度は引退するもカムバックを果たし、20年ぶり45歳で世界ヘビー級王者に返り咲いた伝説のボクシング王者について栄光から挫折そして復活の経歴、モハメド・アリやマイク・タイソンとの比較、ヘビー級最強説を紹介。

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フォアマンのパンチは、キレやスピードよりも重さに特化した質を持っている。
ガードの上からであっても、クリーンヒットしてなくても相手をダウンさせることができる破壊力は『象をも倒す』と言われた。

通常は足を止め単発で力を込めたパンチを放つが、ここぞという時には左右フックにショートアッパーを混ぜるコンビネーションもよく見せている。

この時代のフォアマンを歴代ヘビー級で最強のハードパンチャーという声も多い。
サンドバッグを持つトレーナーごと吹っ飛ばす

サンドバッグを持つトレーナーごと吹っ飛ばす

ついでにトレーナーの帽子も吹っ飛ぶ。
フォアマンがサンドバッグを叩く姿を見た元世界フライ級王者・海老原博幸は「あれが当たれば誰でも倒れる」と驚いた。

若きジョージ・フォアマンのファイトスタイル

オフェンス重視でガードを下げ相手に対して真っすぐ突っ込むフォアマンは、ディフェンスが上手なテクニシャン・タイプではなかった。
相手を追い込む時の直線的な動きは速いが、フットワークを使い左右に回り込む動きは少ない。
(対モハメド・アリ戦を意識し、アリの真似をしたフットワークを「俺もこれぐらいできるぜ」とパフォーマンス的に見せつけることはあった。)
また、ウィービングやダッキングなどのディフェンス技術を使うことも少ない。
しかし、目と勘が良いフォアマンはパンチのポイントをずらし直撃を避けるのが上手かった。

被弾覚悟で突進し剛腕を振り回すフォアマンの強打は対戦相手を恐怖に陥れ、追い込んで一方的に打ちまくるパターンが多かった。
強引に見える攻めであっても、ガードの上からでも効くそのパンチ力により相手はアウトボクシングに徹するか、そのパンチを潜り抜けて接近戦に持ち込むか、どちらかの戦法しか選ぶことはできなかった。

しかし、フォアマンは実は遠近どちらの距離も苦手にしないオールラウンダーでもあった。
距離がある時にはリーチを活かした速くて重さのある左ジャブ、そして飛び込みながらの左右フック。
近づいてくる相手には器用に腕をたたんだショートアッパー。
巧みに使い分けることでKOの山を築き上げた。

フォアマンを最強に導いた優秀な『チーム・フォアマン』

攻撃面は元フェザー級の世界王者で通算103KO勝ちを記録したサンディー・サドラー。
ディフェンス面は元ライト・ヘビー級の世界王者でアーチ・ムーア。
そして、フォアマン方式と呼ばれるマッチメーク術を編み出したマネージャー兼トレーナーのディック・サドラー。

この3人のスペシャリストによって史上最強の剛腕チャンピオン、ジョージ・フォアマンが生み出されたのだった。
チーム・フォアマン

チーム・フォアマン

チームフォアマンと呼ばれた鉄壁のスクラムは、38戦無敗(35KO)という戦績を持つ怪物チャンピオンを誕生させた。

ヘビー級史上最強チャンピオンとまで言わしめた防衛戦

初防衛戦は来日して武道館で行い、世界No1のパンチを日本中に見せつけた。

ジョージ・フォアマン vs ホセ・ローマン

1973年9月1日、1RKOで統一世界ヘビー級王座初防衛。
日本中がド迫力の剛腕パンチに驚いた。

前座ではリカルド・アルレドンドVS柏葉守人のスーパーフェザー級世界戦、沢村忠のキックボクシング公式試合も特例で開催された。

モハメド・アリの顎を砕いたケン・ノートンを2RでKO

ケン・ノートンは1973年3月31日、モハメド・アリの持つNABF北米ヘビー級王座に挑戦。
アリの顎を砕き判定勝ち。
1973年9月10日にアリのリベンジを受けるも判定負けを喫し、NABF北米ヘビー級王座陥落。
(だが、ノートン優勢の意見も多く疑惑の判定と言われている。)
いずれにしても、モハメド・アリと互角に戦った男である。

ジョージ・フォアマン vs ケン・ノートン

1Rはジャブの応酬。ノートンを警戒したフォアマンはいつもより慎重に左ジャブを軸に直進、リーチで劣るノートンは懸命にディフェンス。
2R、スピードあるフットワークで左へ回るノートンに対して、大砲を振り回しながらにじり寄るフォアマン。
フォアマンは剛腕でガードを崩しアッパー連発でダウンを奪う。
ダメージが残ったノートンにフォアマンの豪打を交わす術はなく、ことごとく被弾したノートンを見たレフェリーは試合を止めた。
アリの顎を砕いた男、ケン・ノートンを2RであっさりKOしたフォアマンを誰もが最強だと疑うことはなかった。
フォアマンの豪快KOを目の前で見せられたモハメド・アリは試合後に乱入し、フォアマンを挑発した。

ジョージ・フォアマン vs モハメド・アリ 『キンシャサの奇跡』

3年越しのリターンマッチとなったジョー・フレージャーを下したモハメド・アリはジョージ・フォアマンとの対戦を要求。
アフリカ・ザイール(現コンゴ民主共和国)の独裁者モブツ・セセ・セコが国家事業として企画したキンシャサでの世界挑戦が実現することになった。

だが、ベトナム戦争における徴兵拒否により、WBA・WBC統一世界ヘビー級王座を剥奪されたアリは既に32歳となり全盛期は過ぎたと言われていた。
対して、26歳と若く、アリを倒したジョー・フレージャーとケン・ノートンに圧勝。
しかも、この時点の戦績は40戦無敗(37KO)と歴代で最も高いKO率、さらに24連続KOを誇っていたフォアマン優勢の声が圧倒的に多かった。

なぜ、ザイール共和国でのタイトルマッチになったのか。

経済大国ですら巨額なファイトマネーには尻込みする中、ザイールに目をつけたプロモーターのドン・キングはモブツと接触、当時では空前のファイトマネーを引き出すことに成功した。

独裁者モブツは、国費からフォアマンとアリ両者にファイトーマネーを500万ドル出すことを決定。
それだけの大金を出した理由として、自ら変更した国の名を世界中に宣伝するためとも、独裁政治による内政不満のガス抜きの為とも言われている。

ドン・キングは「黒人の故郷であるアフリカの地で行う歴史的イベント」と銘打って盛り上げていった。
ドン・キング(左)とモハメド・アリ(右)

ドン・キング(左)とモハメド・アリ(右)

アリとフォアマン二人合わせてファイトマネー1000万ドルの興行を成功させたドン・キングはアメリカ興行界で絶対的な地位を築くことになった。

フォアマンにとって完全アウェーでの環境でタイトルマッチ

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