ビートルズ史上もっとも難産だった「レット・イット・ビー」。結局完成したのは予定とは正反対のものだった!
2017年12月11日 更新

ビートルズ史上もっとも難産だった「レット・イット・ビー」。結局完成したのは予定とは正反対のものだった!

デビュー当時のようにオーバーダビングを極力行わずシンプルなアルバムを作ろうということで始められたレコーディング。ビートルズ最後のアルバムとなった「レット・イット・ビー」は、極端にオーバーダビングされメンバーの思惑を外れたものとなりました。なぜそんなことになったのか時系列で足跡を辿ります。

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アビイ・ロード

アビイ・ロード

1.Come Together
2.Something
3.Maxwell's Silver Hammer
4.Oh! Darling
5.Octopus's Garden
6.I Want You (She's So Heavy)
7.Here Comes The Sun
8.Because
9.You Never Give Me Your Money
10.Sun King
11.Mean Mr Mustard
12.Polythene Pam
13.She Came In Through The Bathroom Window
14.Golden Slumbers
15.Carry That Weight
16.The End
17.Her Majesty
ビートルズの最高傑作とも言われるアルバム「アビイ・ロード」ですが、収められている曲の多くは、不毛とも言われた「ゲット・バック・セッション」で既に演奏されていたものでした。

ビートルズが最後の力を振り絞って作り上げた金字塔、事実上のラストアルバムです。

Get Back 1970

1969年12月、ビートルズはドキュメント映画の内容に沿ったサウンドトラックにするようにと要望し、グリン・ジョンズにアルバム「ゲット・バック」の再編集を依頼します。
ゲット・バック

ゲット・バック

1. ONE AFTER 909
2. LINK TRACK
3. SAVE THE LAST DANCE FOR ME
4. DON'T LET ME DOWN
5. DIG A PONY
6. I'VE GOT A FEELING
7. GET BACK
8. LET IT BE
9. FOR YOU BLUE
10. TWO OF US
11. MAGGIE MAE
12. DIG IT
13. THE LONG AND WINDING ROAD
14. I ME MINE
15. ACROSS THE UNIVERSE
16. GET BACK (reprise)
採用はされなかったものの、1970年1月4日にはマラカスやリード・ギター、ブラス、ストリングスを「レット・イット・ビー」にオーヴァー・ダビングするという作業が行われています。

また、「アイ・ミー・マイン」が追加録音されたり、ゲット・バック・セッションでは録音されていなかった「アクロス・ザ・ユニヴァース」が追加されたりし、 1970年1月5日に新たなアルバム「ゲット・バック」は完成するのですが、これもまた日の目を見ることはありませんでした。

そして1970年3月23日、ゲット・バック・セッションのテープはコンセプトを変更し、フィル・スペクターに託されることになります。

Let It Be

フィリップ・スペクターは、ウォール・オブ・サウンドと称される独特の音作りで知られているアメリカ人のプロデューサーです。
フィル・スペクター

フィル・スペクター

プロデューサー、ソングライター、セッション・ミュージシャン
3月23日にテープを受け取ったフィリップ・スペクターは驚異的なスピードで仕事を行い、5月8日にはビートルズの13枚目にして最後となるアルバム「レット・イット・ビー」として発売にこぎつけています。
レット・イット・ビー

レット・イット・ビー

1 Two Of Us
2 Dig A Pony
3 Across The Universe
4 I Me Mine
5 Dig It
6 Let It Be
7 Maggie Mae
8 I've Got A Feeling
9 One After 909
10 The Long And Winding Road
11 For You Blue
12 Get Back
ようやく発売となったゲット・バック・セッションでしたが、この時ビートルズは既に解散していました。オーバーダビングを繰りかえすたためどうしても音がこもってしまうフィル・スペクターのプロデュースのせいでしょうか。ゲット・バック・セッションによる録音がずさんな為でしょうか、このアルバムは他のビートルズのアルバムとは感じが違います。

何よりも大胆なオーバーダビングが行われ、当初の目的から大きく外れたアルバムとなっています。

しかし、何よりも映画「レット・イット・ビー」の公開に間に合わせる必要があったという現実は無視できませんね。ここはフィル・スペクターの手腕を称えるべきでしょう。

Let It Be (movie)

映画「レット・イット・ビー」がイギリスで公開されたのは1970年5月20日です。アルバム「レット・イット・ビー」の発売から12日後のことでした。

映画で使われている音源はアルバムのものとは異なります。ポール・マッカートニーは当初意図したものに近いと感じていたようです。
レット・イット・ビー

レット・イット・ビー

1970年公開作品

監督:マイケル・リンゼイ=ホッグ
映画はゲット・バック・セッションと、予告無しでアップル本社の屋上で行われたライブ(通称:ルーフトップ・コンサート)を記録したドキュメンタリーとなっています。

当初の案としては全て新曲のライブを行い、その模様を全世界にテレビ中継し、同時にアルバムも発売するというもので、そのリハーサルとレコーディングをドキュメンタリーとして映画にするというものでした。

映画「レット・イット・ビー」は、ギスギスした人間関係が映し出され、解散が近いことを感じさせるものとなっています。

The Beatles' Anthology 3

1995年からビートルズの未発表曲集「ザ・ビートルズ・アンソロジー」が3集にわたって発売されます。1996年にリリースされた「ザ・ビートルズ・アンソロジー3」ではゲット・バック・セッションでの音源を聴くことが出来ます。
アンソロジー  3

アンソロジー 3

ディスク 2

1 I've Got A Feeling (Anthology 3 Version)
2 She Came In Through The Bathroom Window (Anthology 3 Version)
3 Dig A Pony (Anthology 3 Version)
4 Two Of Us (Anthology 3 Version)
5 For You Blue (Anthology 3 Version)
6 Teddy Boy (Anthology 3 Version)
7 Rip It Up / Shake, Rattle And Roll / Blue Suede Shoes (Anthology 3 Version)
8 The Long And Winding Road (Anthology 3 Version)
9 Oh! Darling (Anthology 3 Version)
10 All Things Must Pass (Anthology 3 Version)
11 Mailman, Bring Me No More Blues (Anthology 3 Version)
12 Get Back (Anthology 3 Version)
13 Old Brown Shoe (Anthology 3 Version)
14 Octopus's Garden (Anthology 3 Version)
15 Maxwell's Silver Hammer (Anthology 3 Version)
16 Something (Anthology 3 Version)
17 Come Together (Anthology 3 Version)
18 Come And Get It (Anthology 3 Version)
19 Ain't She Sweet (Anthology 3 Version)
20 Because (Anthology 3 Version)
21 Let It Be (Anthology 3 Version)
22 I Me Mine (Anthology 3 Version)
23 The End (Anthology 3 Version)
様々な楽曲が入っていて楽しめますが、アウトテイク集ですからアルバムとしてのまとまりはありません。
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