『ガンプラり歩き旅』その62 ~番外編 はばたけ! 宇宙の勇者ザンボット3!(アオシマVSバンダイ編)~
2021年6月22日 更新

『ガンプラり歩き旅』その62 ~番外編 はばたけ! 宇宙の勇者ザンボット3!(アオシマVSバンダイ編)~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をしてきた『ガンプラり歩き旅』。 今回は前後編で、ガンプラブームと共にロボットプラモブームを牽引した、アオシマ製プラモデル群から、『ガンダム』の富野由悠季監督の名作『無敵超人ザンボット3』(1977年)の、当時から現代に至るプラモデルを紹介していきます!

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いや、構えてないよね? これどう見ても、「剣を構えてます」ってポーズじゃないよね?
ザンボットブローを構えるザンボット3

ザンボットブローを構えるザンボット3

これも、これが精一杯のポージング。ボケはともかく、これだけ武器が豊富であれば、完成させた子どもにとっても遊び甲斐があるというものであり、少なくとも、武器が少ないよりは多い方が、得した気分にはなれる。ブローの長さも、商品枠から考えれば、充分納得できるだけの尺はある。
謎の巨大ザンボマグナム

謎の巨大ザンボマグナム

大河さんの世代で、このキットを買ったモデラーが、当時一斉に呆然とするしかなかったといえばこれ。謎のザンボマグナム。
本来であれば、合体収納している小型ロボットのザンボエースが使うべき銃器を、サイズの違う巨大主役ロボットに持たせてしまおうという発想は、同時期開発のアニメスケール大サイズのザンボット3でも試みられたが、今回はライフルとグレネードランチャーの2か所から、ご丁寧にもスプリングでの弾丸発射ギミックもついている。
社会現象化していたガンプラの主役のガンダムのメイン武装がビーム・ライフルだったから、こっちも……というアオシマの発想自体は容易に想像がつくのだが、鎧兜のロボットに現代式ライフル銃という組み合わせの図は、ちょっとどころかかなりシュール。
せっかくなので、ザンボット3に構えさせてみる

せっかくなので、ザンボット3に構えさせてみる

写真を一目見ればお分かりのように、このザンボット3の腕の保持力では、この巨大なザンボットマグナムは、構えるどころか、握って立っていることさえ困難な組み合わせ。
なのでこの写真では寝かせて撮影したが、要はこの時代は、ロボットプラモデルはまだまだ「丁寧に、奇麗にフィニッシュワークして飾っておく」のではなく「手に持って、ブンドドしながら、ガシガシ動かして遊ぶ物」だったわけで、それは他ならぬブームの立役者のガンプラにおいても、フラッグシップの一流モデラーの間では、固定ポーズやジオラマ作りなどでハイエンドな雰囲気を周囲に与えていたのかもしれないが、エンドユーザーの大半は、手に持ったままポージングさせて、動かしてナンボだったのだよと、それは当時のブーム渦中の減益だった大河さんだから言い切れる「当時の現実」だったりするので、関節はこの時期はまだ、保持力とか自立力とかよりも、とにかく動けば動いた奴の勝ち的な雰囲気は確実にあっただろう。
まぁ、ただこのサイズのザンボマグナムは、さすがにびっくりしたが(笑)
ザンボマグナム 3種

ザンボマグナム 3種

上から、アオシマアニメスケール大サイズ版、今回の合体ロボット版、そしてやはり今回の、バンダイスーパーミニプラ版、それぞれのザンボットマグナム。
こうしてならべてみると、当然アニメの設定画に一番忠実なのはバンダイ版だが、それに準じているのはアニメスケール大サイズ版だということが分かる。
大きさだけではなく、デザインも大幅に元と違う今回のアオシマ版は、何を目指してこうなったんだろうか(笑)
謎の、バスター発射マシン

謎の、バスター発射マシン

中にスプリングが仕込んであり、先端にザンボット3の投擲武器、バスターをセットして黄色いスイッチをポチっと押すと、バスターがばびゅーんと飛んでいく、そんな感じの、このキットオリジナルのユニット。
まぁ70年代を子どもとして、玩具やプラモデルに囲まれて育った身としては分からなくもない。
あの頃は、テレビで飛ばされていたアイテムは、色んな理由でカタパルトをでっち上げられたりして、スプリングで飛ばされまくっていたのが70年代なのである。
ロケットパンチなんて、ポピーの超合金では標準装備で、テレビでの設定にないばかりか、およそそんな物騒な武器を装備しててはいけない昔話の主人公まで、超合金化されればロケットパンチが装備されていた時代だ。
だから、ザンボット3でも、バスターは手に持って敵に投げつける武器ゆえ、手の代わりにスプリングを仕込める発射装置を勝手にでっち上げて、そこから発射できる遊びで、テレビの中のバスターの発射を味わってくださいというコンセプト自体は、別にアオシマの持病でも芸風でもなく、一般的な玩具の仕様の範疇だった。
だから、この謎武器に対しても無粋なツッコミは入れるまい。
ただ、さすがに今年51歳になったおっさんが、性根の底まで少年に戻れることも出来ないので、今回はこのバスター謎発射マシンを、それらしい塗装でそれっぽく見せることも出来ず、成型色のまま、「いちおう組み立ててみました」どまりである。
うん、おおらかな時代であった。
アオシマから当時発売されていた、3種のザンボット3が結集!

アオシマから当時発売されていた、3種のザンボット3が結集!

今回入手できた3種のアオシマ版ザンボット3を一通り見てみても、アオシマがそもそも持っていた、「子どもの創造を育成するプラモデル作り」から「ガンプラブームを追いかけて、ティーンズ向け路線へ変更していくプロセス」が見て解っていただけたと思う。
これらの時期以降、アオシマは『イデオン』の1/600シリーズで、さらにティーンズ向けロボットプラモへ邁進していくのだが、そこにはバンダイ程には洗練された技術はないが、アオシマ独特の温かみのようなものは、受け継がれていった。

今回のキットでは、最初の紹介で書いた通り、成型色と実際の設定の色が全く異なるので、全面的に塗装をほどこした。
グレー部分は明灰白色、紺色はブルーFS15050、赤はキャラクターレッド、黄色はキャラクターイエロー、顔のマスクはミディアムブルーで、それぞれ正統派解釈で塗装してみた。
現代のバンダイ版と比較するのは酷かもしれないという想いもあったが、一方で、36年の月日を経てなお、「最新素材と最新技術を投入した最新プラモ」が捨て去ったものが、このアオシマ版にはあるという確信もあり、今回の比較記事になった。

さて、ここからはバンダイスーパーミニプラ版ザンボット3の解説に移ろう。

バンダイスーパーミニプラ版ザンボット3の完成状態

バンダイスーパーミニプラ版ザンボット3の完成状態

ここまでいろいろと、ツッコんだりボケたりして紹介してきたアオシマ版とは違い、さすが現代のバンダイ版は完璧超人仕様である。
各メカ状態でのシルエットもディテールも完璧。合体したロボット状態もどこにも破綻はない。関節可動もそこいらのガンプラ以上に動き、色分けも必要最小限のシール補完だけで、パーツの成型色で完璧。非の打ち所がないとしか言いようがない。
――商品をwebや写真で見る限りにおいては。
バンダイ版のサイドビューとバックビュー

バンダイ版のサイドビューとバックビュー

今、あえて引っかかるような物言いをしたが、基本的には満点に近いザンボット3なのだが、ここまで書いてきた「もはやこれは“合体”とは呼べない“作業”だ」感と並行する形で、実際に手にしてみないと気づかされない欠点が、実はこのキットにはいくつかある。
しかしそれは、元々のクオリティが高いがゆえにつける難癖レベルであって、純粋に時代差を配慮しない比較で言うならば、もちろんこのキットに、アオシマ版に勝るところはあっても、劣るところはない。

しかし、だからこそ、気になるところ、気付いたところが引っかかるのである。
いわゆる「画竜点睛を欠く」というやつである。

実はバンダイという企業は、各事業部単位でしのぎを削り合って成り立っているという話は、これまでも何度かこの連載で言及してきたのだが、世界に誇る樹脂成型技術と模型技術を蓄えているのは、あくまでもホビー事業部であって、その他の部署、プライズ商品を扱うベンダー事業部であったり、このキャンディトイ事業部であったりは、ホビー事業部ほどの経験値を詰むだけの機会に恵まれてこなかった。
それゆえ、例えばこれまでにも、プライズ商品の「完全変形Vガンダム」「ウルトラマン対ゴモラ 大阪城決戦セット」等を初めとして、発想と着眼点は、既存のバンダイには絶対ないほどツボを突いてくるコンセプトにも拘わらず、実際に完成した商品そのものが、量産技術や生産能力の限界論で、惜しいレベルに終始している、という事例は、2000年代前半までは多かった。

ある意味で、ベンダー事業部やキャンディトイ事業部の商品が試金石となって、ホビー事業部の隆盛を支えているのかもしれないが、要するにホビー事業部以外の商品には「詰めが甘い」物が多いのである。

ここまでを前置きとして、バンダイ版のザンボット3の完成形を見ていこう。
自然なファイティングポーズも楽々こなす可動範囲と完成度

自然なファイティングポーズも楽々こなす可動範囲と完成度

まずは、設計、コンセプト自体は大成功であろう。
二次元の嘘で誤魔化されていた70年代のスーパーロボットを、合体マシン単体と、合体後のロボット状態の再現を両立させつつ、フル可動のアクションフィギュアとしてもレベルが高い物にする。その上でさらに、36年前のアオシマ合体ロボット版への敬意をオマージュと商品仕様という形で盛り込んだまでは、隙のない完璧な仕事であった。
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