桜庭和志  初代タイガーマスク、新日本プロレス、UWFに魅せられ、「プロレスこそ最強」のUWFインターナショナルに入団
2025年7月1日 更新

桜庭和志 初代タイガーマスク、新日本プロレス、UWFに魅せられ、「プロレスこそ最強」のUWFインターナショナルに入団

かつてサムライの国がブラジルの柔術にガチの勝負で負けて「日本最弱」といわれた時代、舞い降りた救世主は、180cm、85kg、面白い上に恐ろしく強いプロレスラーだった。

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指導者や先輩が、スポーツ推薦で入った同級生を積極的に指導する中、まったく目立たず、あまり相手にされない桜庭和志は、見よう見まねで技を行い、うまくできないと、その理由を考え、コツコツと反復するなど、自然と自主性が磨かれた。
するとまずタックルがうまく入れるようになり、次にどんな場状態でもタックルを出せるようになった。
スパーリングも、
「休まず攻める」
「亀(うつ伏せ)になってから攻める」
など常にテーマを持って行った。
パワーもスピードもない桜庭和志は、バスケットボールで培ったフェイントを多用し、少しの動きで相手をダマし、スキを突き、
(ダマされてやんの!)
と最高の気分に。
初試合は入部2ヵ月後、1年生の6月で、推薦入部で入った同級生に勝利して、
「マジでうれしかった!」
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その一方で摩擦や打撲を繰り返すことで、まず右耳が餃子のようになった。
一般に
「耳が潰れる」
「耳がわく」
といわれる皮膚と軟骨の間に血液がたまって腫れた状態で、タックルに入るのを左右逆にすると、左耳も餃子化。
投げられるのがイヤで膝からマットに落ちるのを繰り返しているうちに右膝の後十字靱帯を断裂。
その後、左膝の内側側副靱帯も痛めてしまう。
それほど熱心にレスリングに取り組む桜庭和志について、茂木優監督は、
「彼(桜庭和志)は、62~63㎏だったんですが、飲み込みの早さは普通ですかね。
並み以上、そこそこでした。
器用な方ではなかったけれど、懐が深く、やりにくいレスリングをしていた。
頭角を現したのは2年生から3年生に入れ替わるころで、片足タックルがよかった。
あとリーチも長いから、グラウンドがよかった」

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レスリングに熱中しながら、桜庭和志は、テレビでワールドプロレスリングを観て、週刊プロレスも隅から隅まで熟読。
ビデオでUWFもチェックしていたが、高校1年生の9月、不仲が噂されていた佐山聡と前田日明の不隠試合が起こり、10月になると佐山聡がUWFからの脱退し、「ケーフェイ」を出版。
「ケーフェイ (Kayfabe)」 とは、プロレス界の隠語で、詐欺、インチキ、捏造などという意味で、佐山聡は、この本でプロレスの裏側を暴露しつつ、自身の理想の格闘技について語った。
その格闘技の名前を、
「シューティング」
と呼び、それは、
「シュートとは撃つこと。
つまり殺すことだが、これを格闘技に当てはめるとノックアウトかギブアップで勝負を決める」
という意味で、その格闘技を行う選手を、
「シューター」
とし、自身のジム「スーパータイガージム」でシューターの養成を開始。
これが現在の総合格闘技団体「修斗」となった。

前田日明VSドン中矢ニールセン睨み合い

稼ぎ頭の佐山聡を失ったUWFは、新日本プロレスと業務提携を結び、前田日明や高田延彦らUWF勢と新日本プロレス所属のプロレスラーの抗争戦が始まったが、多くのUWFファンは、
「UWF崩壊」
と落胆した。
桜庭和志が高校2年生になった春、前田日明とアンドレ・ザ・ジャイアントの不隠試合が起こり、その半年後には前田日明とキックボクサーであるドン・中矢・ニールセンの異種格闘技戦があり、2戦共に勝利した前田日明は
「格闘王」
と呼ばれた。

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高校3年生の6月、佐山聡が日本初の総合格闘技のアマチュア大会「第1回プリシューティング大会」を開催。
プリ(事前)と名づけたのは選手のレベルがまだ低かったためで、入場料は500円。

・上半身は裸
・下半身は、シューティングタイツ、ニーパッド、レガース、サンボシューズ着用
・頭部は、目の周りを透明な板で覆った「プロテクトマスク」を着用
・顔面への攻撃は掌底のみ
・寝技は、打撃禁止、かつ膠着を防ぐため30秒以内

というルールで、約40名の選手が、58kg級、62kg級、66kg級、71kg級、76kg級、82kg級の6階級に分かれて戦い、スーパータイガージムのインストラクターで、マンガ「グラップラー刃牙」の主人公、範馬刃牙のモデルとなった平直行は、76kg級で優勝した。

フロント・ネックチャンスリー・・復活タイガーVer

その5ヵ月後、新日本プロレスのタッグマッチで、前田日明がサソリ固めをかけて両手が使えない長州力の顔面を蹴って病院送りにして、無期限出場停止処分となった。
(長州蹴撃事件)
レスリングには、体のどの部分への攻撃も許されるフリースタイルと、腰より下をつかむことを禁じられているグレコローマンスタイルがあるが、高校3年生の桜庭和志は、UWFスタイルを導入。
佐山聡が使っていたタイガードライバー(相手の頭を抱えて、小さなブレーンバスターのように投げる)を練習し、試合でも使った。
「佐山さんは、足を後ろに振り上げて投げていた。
だから足の重さを使えばできるかなと思ってやってみたら、投げることができました。
結局は、タイミング!」
そしてインターハイの団体戦で準優勝し、個人でもグレコローマン69㎏級で全国3位になった。
桜庭和志は、プロレスは大好きだったが、レスリングが面白すぎて、プロレスラーではなく大学生になることにした。

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面接と作文だけで入った中央大学のレスリング部の道場には、歴代部員の名札がかかっており、その中には石井庄八、笹原正三、池田三男、渡辺長武、中田茂男などオリンピック金メダリストもいた。
さらに桜庭和志は、
「鶴田友見」
という名札を発見。
ミュンヘンオリンピックのグレコローマン100㎏超級に出場した全日本プロレスの「ジャンボ鶴田」だった。

南努「Dreamer」Music Video

中央大学レスリング部員は、全員、寮で生活。
そこは1年は奴隷、2年は平民、3年は殿様、4年は神様といわれる縦社会だった。
「忙しいったらありゃしない。
1年生は、朝の7時、そして夜の8時半に寮を掃除しなくてはいけない。
門限は、1年生が8時半で、2年生は10時半。
3、4年生は、柵を乗り越えて遊びに行ったり飲みに行ったりと、もうフリー状態。
でも1年生は、夜も雑務が残っているので遊びに行くなんて無理。
練習が終わるのが、8時くらいで、それから掃除して洗濯して晩メシ食うと、すでに10時過ぎてる。
寝る前も必ず一仕事しなくてはいけない。
思春期の男性には絶対に欠かすことのできない、重要な任務だ
寮での集団生活においてコレをいかに遂行するか
コレはコレで大問題だった
僕は要領よく、みんなが寝静まってからコッソリと・・・」
寮では、通常、1年生から4年生が1人ずつの4人部屋だったが、電話がある部屋だけ、1年生が2人と、2、4年生が1人ずつという変則的な構成で、桜庭和志は、この「電話部屋」に入れられた。
電話を取るのは、1年生の役目で
「3回以上なる前に取らなくてはならない」
というルールがあり、破ると長時間正座。
電話は、早朝や夜中にも鳴ることがあるため、桜庭和志は電話番のときは緊張して熟睡できず、
「電話ノイローゼで髪の毛が抜けた」

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1年生の桜庭和志は、使い走りをしたり、コキ使われながら練習。
強い先輩にモマれてメキメキと実力を上げ、1年生の夏の全日本学生選手権で日体大の太田拓弥(アトランタオリンピック銅メダリスト)に勝利。
「桜庭は背が高くてリーチがあって体が柔らかい。
ウナギみたいにつかみどろころがなくて、5回タックルをとられて、1-5の判定で負けたはずです」
という太田拓弥に、秋の新人戦で飛行機投げでリベンジされたが、2年生の春、東日本新人戦フリースタイル68kg級で優勝。
ちなみに90㎏級で優勝したのは、1つ下の藤田和之(日本大学)で、桜庭和志は、
「顔が大きい」
と思った。
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そんな順調な大学レスリング人生だったが、2年生の夏から監督が、練習を筋力強化などフィジカル重視に変えたため、スパーリングが大好きで、
「フィジカルトレーニングは補強」
と思っていた桜庭和志は、モチベーションが急激に低下し、練習がつまらくなってしまった。
腕立て伏せ、腹筋、スクワットなどの反復回数は数百回になり、ランニングの量も異様に増え、
「あ~あ、ここ陸上部じゃないんだよ」
「スパーリングで実戦的な練習したほうが絶対強くなれるのに」
と思いながら、2年生の桜庭和志は黙って指示に従って練習。
3年生になって外出が自由になると、飲みに出るようになったが、ある日、終電を逃してしまい、小学生で盗みをやめた桜庭和志は、捨てられていた自転車に乗って寮へ。
寮まで数百mのところでパトカーに呼び止められ、交番に連行され、数時間後、身元引受人として同級生に向かえ来てもらった。
「すごく恥ずかしかった」
という桜庭和志は、以後、盗みに続き、落ちているものを拾うこともできなくなった。
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