肩の回転も、背中のバインダーとの干渉をギリギリ逃して、360度回すことは可能になっている。
開脚は、見栄えを無視して股関節軸から脚部を左右に引き出せばある程度は開けるが、腰アーマーを設定画からの解釈そのままに、脚部側に固定してしまったので、それが腹部と干渉してしまい、脚を踏み出す事すらままならない。
アニメデザイン至上主義がある種の絶対的な価値観となってしまえばこうなるという見本。それが「全身にポリキャップを仕込みながらも、首と肩の回転と、肘と手首以外は殆ど可動しないデクノボー」という1/144 Zガンダムという結果を生んだ。
キットには、ビーム・ライフル、ビーム・サーベル(2本)、シールドと、ガンダムお約束の三種の神器は付属してくる。
パーツ分割は細かく、背部腰アーマーのバーニアが全部別パーツになっているところなどは、MSVで培われてきたバンダイのディテール主義が良い意味で結実しているといえるだろう。
なので、ポージングしようにも、どうしても腕の角度や武器の持ち方で印象を変える程度の小技しか通用しないのである。
それはまぁ、シミルボンのためというよりは、この『ガンプラり歩き旅』連載で、かなり長い事イデオンやらスーパーロボットの紹介を続けてきたので、『Zガンダム』以降編再開においては、やっぱり主役ガンダムをまずは紹介しなければなぁと思ったというのもあるが、そこは転んでも大河さん(笑)「シミルボン連載での再現に、このキットでこそ」という使い道を思いついたからでもある。
そうだ、と思いついたのが、まずは「『Zガンダム』作品内の再現」ではなく、むしろ次作『機動戦士ガンダムZZ』冒頭時の再現であった。
それが『Zガンダム』の場合は「ガンダムMK-ⅡからZガンダムへ」だったのだが、新作続編の『ガンダムZZ』では、その露払い前座役を、『Zガンダム』では主人公メカだったZガンダムが務め、真の主人公ガンダムのZZガンダムは早くも第11話『始動!ダブル・ゼータ』から登場するのであるが、それまでの間主人公ジュドーは、前作後半の激闘で半分壊れかけのZガンダムに乗り込んで活躍するのである。
前作と打って変わったコメディタッチの演出や作風を推し出すためと、Zガンダム自体がガタがきてボロボロなのを画で示すため、第2話などのジュドー初出撃では、Zガンダムは「肝心のコクピットハッチが閉まらない」状態で、敵ネオジオンの美形艦長・マシュマーのガルスJ(こちらも整備不良でハッチが閉まらない辺りがギャグ)と、チグハグな戦闘を行うという辺りが『ガンダムZZ』初動の印象的な演出なのである。
なぜなら、90年代の初代HG Zガンダム以降のZガンダムキットは、全てなにかしらの手法でウェイブ・ライダーやウェイブ・シューターに変形させられるので、コクピットハッチを開ける加工をしても、その内部が何かしらのパーツが埋まっていて、狙い通りの加工がしづらいというのがまず挙げられる。
その上で、多少は拙い(筆者の)工作である方がポンコツ度合いがちょうど醸し出せるし、何より「アニメ設定への忠実度」でだけなら群を抜くこのキットにも、出番があるというのはシミルボン再現画像的にも意義がある。
このキット、胸のコクピットハッチがそのまま、腰や腹部や背部のバインダーと一体になる構造で、完成後の差し替えをポリキャップ接合部分で逆算すると、結局頭部と腕部と脚部以外は、ボディは背中のバインダーとスラスター含み、全部をもう一個作り足す羽目になった(笑)
キット本来の可動範囲の狭さも、ジュドーの慣れてない操縦の拙さの表現ということでカバーできる。