アンディ・フグ【極真時代】青い目の空手家 Blue Eye Samurai
2018年11月30日 更新

アンディ・フグ【極真時代】青い目の空手家 Blue Eye Samurai

ヨーロッパの小国、スイスで生まれた少年は、極真空手に一目ぼれした。 決して大柄ではないが鍛え上げられた肉体、高い身体能力と精神力、哲学者的風貌。 「青い目のサムライ」は、海を渡り、踵落としで空手母国:日本を席巻した。

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世界大会に負けたアンディ・フグは、ナニクソ根性でハードトレーニングを開始。
17時まで働いた後、道場で22時まで稽古。
家に帰ってすぐに寝る。
そして深夜2時に起きてトレーニングを開始した。
その足技は芸術的なほど華麗で強力だった。
特に「踵落とし」は、独自に編み出したオリジナル技だったので、誰もまともに受けることができず、崩され倒されていった。
アンディ・フグの踵落しは、左右両方から出され、内側から回す内回し踵落としと、外側から回す外回し踵落しがあるため4種類の踵落しがある。
その踵は自分より大きな相手の顔面にさえも落とされた。
このナニクソ根性こそアンディ・フグが「青い目のサムライ」と呼ばれる理由の1つであり、また現在社会が失いつつあるものなのかもしれない。

精鋭部隊

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スイスは永世中立国なので他国に攻め入ったり、他国同士の戦争に干渉しないが、他国が自国に攻め入ってきたときは、6時間以内に徴兵期間中、または徴兵制を終えた男子が30~40万の兵士となって動員される。
路・橋・橋梁・堤防などの公共施設は、有事には破壊して障害化できるようにつくられ、民間の飛行場も軍用に転換できる。
農地も機関銃の陣地や対戦車陣地がいつでも造れるような形になっている。
住宅も、腰から下は小銃弾の貫通に耐えることができるくらい強い壁になっていて、地下に核シェルターもある建物も多い。
スイスは非武装中立で平和が守れるとは思っていないのである。
男性は、18歳で兵役を務められる能力があるかどうかを調べる身体検査が義務付けられている。
(女性の兵役は志願制)
そこで不合格と診断されると兵役免除となるが、代わりに年収の3%の税金を30歳まで納める。
また介護、警備、医療などの代替役務を行えば減免または免除となる。
合格者は20歳になると、15~17週間、隊列の組み方、銃や化学兵器の取り扱いなどの初任訓練を受けてライフル(実弾は支給されない)など個人装備一式が支給される。
これは徴兵終了まで自己管理となる。
それから10年間、毎年3週間の補充講習を受け、通算で合計260日間の兵役に就かなければならない。
学業や海外赴任などの理由で延期は可能だが免除はされない。
近年、兵役に就く男性は60%で、40%は何らかの理由で免除となっている。
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アンディ・フグは兵役中に行われた体力測定で多くの新記録を出した。
それは現在でも破られていないものもある。
そしてその身体能力から山岳パラシュート部隊に選ばれた。
世界中の軍隊で、パラシュート部隊は精鋭と呼ばれる。
敵と味方が陣地を奪い合う最前線を輸送機で密かに越え、敵の支配地域の中にパラシュートで降下する。
輸送機から飛び降りるとき、主傘と予備傘が20㎏、小銃や背嚢など個人装具を30㎏をつけている。
1000m以上の高さから飛び出すスカイダイビングと違い、パラシュート部隊の高度設定は敵から発見されるのを防ぐために300m。
それは333mの東京タワーから50㎏以上の装備を身につけ飛び降りるようなもので、通常の降下訓練でも死傷者が出ることもある。
その着地の衝撃はすごくて、長くパラシュート部隊を続けると膝がおかしくなってくるという。
着地はあくまで始まりで、敵の支配地域に降り立ち、少人数軽装歩兵のままで作戦を遂行しなければならない。
そういう精鋭部隊にアンディ・フグはいた。

極真空手 第4回世界大会2位

【空手 極真第四回世界大会】木元正資 対 アンディ・フグ Kyokushin Karate Masashi Kimoto vs Andy Hug

極真アーカイブス 第4回 全世界 5回戦 アンディ フグ vs 桑島保浩

1987年、第4回極真空手世界大会は、ミッシェル・ウェーデル、ピーター・スミット、ジェラルド・ゴルドー、アデミール・ダ・コスタなどの海外の強剛が空手母国に集った。
アンディ・フグも「アルプス最強の男」といわれた。
そして4回戦で闘将と呼ばれた木元正資と対戦。
パンチから叩き落とすようなローキックで棒立ち状態にさせて、ダウン寸前に追い込み、文句なしの判定勝ち。
試合後、木元正資は、アンディ・フグの突きについて
「あまりに強烈なので死ぬかと思った」
といった。
5回戦は、同年の全日本中量級で優勝し、翌年の体重無差別の全日本大会で優勝することになる桑島靖寛にローキックで一本勝ちした。

極真アーカイブス 第4回 全世界 準々決勝戦 アンディ フグ vs アデミール S F ダ コスタ

準々決勝でアンディ・フグはアデミール・ダ・コスタと対戦。
アデミール・ダ・コスタは、かつて130㎏の中村誠に対して、68㎏(当時)の体とフットワーク、変則的な蹴りで戦い判定勝ちしたことがあった。
ちなみに中村誠は2度も世界大会で優勝する選手である。
前回の世界大会では4位、100人組手も完遂したアデミール・ダ・コスタは、さすがにアンディ・フグの踵落としをうまくディフェンスしたが、踵落としからのローキックで技有り。
さらに右のミドルキックをもらい、合わせ技で一本負けした。

Kyokushin Karate 極真空手 第4回世界大会 増田VSアンディ・フグ

アンディ・フグの準決勝の相手は、爆発的な攻撃力で「爆撃機」と呼ばれた増田章だった。
試合開始早々、パンチとローキックでラッシュする増田章に
「優勝するためには、脚にダメージを抱えると次の試合に勝てないから、1試合で3本以上いいローキックをもらわないように徹底的に脛受けの練習をしてきた」
というアンディ・フグは冷静にカット。
そして踵落としで牽制し、増田章に間合いに入らせないようにしながら、軽く速いパンチから強いローキックで増田章をグラつかせ、フットワークで後ろに下がりながら、下段後ろ回し蹴りで追ってくる増田章にで脚を蹴り、さらにグラつかせた。
増田章の脚のダメージは明白だった。
2人は、3回の延長戦を戦い抜き、判定でアンディ・フグが勝った。
過去に極真空手の世界大会で決勝に進んだ外国人はいなかった。

アンディ―・フグ 第四回全世界空手道選手権大会 決勝

決勝戦は松井章圭 vs アンディ・フグ。
この大会前に100人組手を達成した松井章圭も得意技はアンディ・フグ同様、足技だったため、両者の戦いは危険で華麗な足技の応酬となった。
アンディ・フグより身長が低い松井章圭には、踵落としがヒットしやすいはずだったが、松井章圭は下段後ろ回し蹴りで迎え撃つという超のつく天才っぷりを発揮した。
また再延長戦では、アンディ・フグが、故意ではないが松井章圭の顔面に突きを入れてしまう反則を犯してしまった。
そして判定で、4年前同様、松井章圭の勝ちだった。
しかしアンディ・フグの強さを疑うものはいなかったし、世界大会2位は外国人初の快挙だった。

vs 緑健児

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松井章圭は、大会後、選手を引退した。
アンディ・フグは、友人と共同出資で「Sports Freaks」というスポーツショップを始めた。
また雑誌の撮影で、トップモデルのイロナと出会いアンディ・フグは一目惚れ。
仕事のためにアメリカにわたるというイロナに猛チャージし、イロナはアメリカ行きをやめ、2人は小さなアパートで同棲を始めた。
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